定量分析

SEO1位ページの49.4%がAI Overviewsに引用されていない理由は?15万キーワード調査で見えた傾向を解説

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目次

最近、Googleで検索すると、検索結果の最上部にAIによる要約が表示される「AI Overview(AIO)」を目にする機会が非常に増えたと感じます。

日本国内でも、2025年3月に実施されたGoogleのコアアルゴリズムアップデートとほぼ同時期に、このAI Overviewの表示が急増しました。それから半年近くが経過し、現在では多くのキーワードでAIOが表示されるようになっています。

この変化は、サイト運営者やSEOに携わる私たちにとって、重要な転換点であると感じています。

では、AI Overviewの枠内では、どのようなサイトが取り上げられているのでしょうか?  AIOに引用されることは、検索経由の集客においてどれほど重要なのでしょうか?  

そして最も重要な問いとして、AIOに「引用されること」は、自社の「ブランドが推奨されること」につながるのでしょうか?

今後の集客戦略を考える上で、これらの疑問は避けて通れません。

そこで今回、2025年9月時点の最新の検索結果データを収集し、大規模な調査を実施しました。

この記事では、  

  • どのようなキーワードでAIOが表示されているのか  
  • どのようなサイトが引用元として選ばれているのか
  • 引用されることと、ブランドが文章中で表出することに影響があるのか

について、調査で判明した事実と、そこから見えてきた私なりの考察を共有したいと思います。

なお、本調査での「引用」と「ブランド推奨」の定義は以下の通りとなります。

  • 引用:AIOが回答を生成する際に、情報の根拠としてURLを参照し、表示すること

  • ブランド推奨:AIOの回答本文中で特定のブランド名(サービス名や商品名)が「おすすめ」として言及されること

調査概要:15万キーワードの調査による日本のAIO表示実態

今回の調査では、AIOが検索行動やブランド認知に与える影響を明らかにするため、「引用元として選ばれること」と「ブランドが推奨されること」の関連性を検証しました。

特に「オーガニック検索での順位」と「AIOでの引用」の相関に注目し、従来のSEOによる自然検索枠での上位順位獲得がAIOにどの程度有効かを把握することも目的としています。

また、AIOが内部で生成するサブクエリ(Query Fan-Out)の影響を分析することで、今後のSEO戦略に役立つ指針や示唆を得ることも目指しました。

まず、日本の検索結果においてAI Overviewがどの程度表示されているのか、その実態を調査しました。Google(JP)で最もAIOで引用されるドメインAhrefsでGoogle JPの検索結果全体を俯瞰すると、最も引用されているドメインはYouTubeで、次いでWikipedia、note.comが続いています。

これは全体を網羅したデータですが、今回はより詳細な実態を把握するため、私自身で独自のキーワードセットを用意し、調査を進めました。

▼ 調査概要

  • キーワード数: 158,542個
  • 抽出条件: 検索ボリュームが10以上あるキーワード
  • カテゴリ: 以下の9つのカテゴリに分類
  1. 医療系(病名・疾患・悩み)
  2. 医療系(美容医療)
  3. 医療系(病院検索)
  4. 金融系(クレジットカード、ローン、株など)
  5. 転職系
  6. 旅行系
  7. 不動産系
  8. ファッション関連
  9. B2B SaaS系
  • 調査対象: Google JPのスマートフォン検索結果

▼ 調査フロー

この15万強のキーワードを一つずつ調査し、AIOが表示されるか否かを集計しました。

  1. キーワードの用意とデータ取得
    調査にあたり必要となるキーワードとSERPs、フラグ付けを実施
    1. 指定した9つのカテゴリに関連するキーワードをランダム抽出
    2. キーワードの精査(意味の類似・重複・意味不明等を統合/排除)
    3. 各キーワードの検索結果(SERPs)を取得
    4. 検索結果データ等からキーワードのクエリタイプをAI判定
    5. 検索結果データからAIOコンテンツおよび引用URLを抽出
    6. 検索結果データからAIO引用URLの自然検索枠順位を抽出
    7. AIOコンテンツからエンティティを抽出
  2. 抽出データの集計および分析
    以下を分析:
    1. AIOが表出するキーワードの偏りや傾向(クエリタイプや領域で違いはあるか)
    2. AIOに表出するURLと、そのURLの自然検索枠順位の関係性(RAG検索で上位ならAIOに表出するか)
    3. カテゴリごとの引用ドメイン(サイト)の傾向や偏り(どのようなサイトが引用/採用されやすいか)
    4. AIO内で推奨されるブランド/人物/商品エンティティの傾向や偏り
    5. AIO内で推奨されるブランド/人物/商品エンティティと、引用サイトの関係性(事業者公式サイトが引用されれば、事業者ブランドもより表出するか)
    6. 引用ページのページ内コンテンツやHTML構造の傾向(引用されるページは特徴や傾向があるか)

分析結果①:AIOの表示率

▼ AIO表示率(全体)

調査対象の158,542個のキーワードのうち、AI Overviewの表示が確認できたのは39,968個でした。比率にすると25.2%です。

調査キーワードとAIIO表出

この数字から言えるのは、私たちが日常的に行う検索のうち、およそ4回に1回(10回検索すれば2〜3回)はAI Overviewに遭遇しているということです。

もはや、AIOは一部の特殊な機能ではなく、検索体験のスタンダードになりつつあると言えるでしょう。国民的に使われるサービスであるからこそ、多くの人が意識的・無意識的にAIOの存在を認知する段階に達していると、私は考えています。

※尚、本調査は医療・金融・転職・不動産など9カテゴリに絞ったキーワードセットを対象としたものであり、日本語検索全体におけるAIO出現率を厳密に推計したものではありません。あくまで、これら領域での当方が指定したキーワードセットでの傾向として捉えてください。

▼ クエリタイプ別表示率

次に、AIOが表示されたキーワード(39,968個)が、どのような検索意図(クエリタイプ)だったのかを分類しました。

  • 情報探索系(インフォメーショナル):77.1%
  • 商業系(コマーシャル):17.7%

やはり、「何かを調べたい」といった情報探索系のクエリでは、AIOの表示が圧倒的に多く見られます。裏を返せば、「何かを申し込もう」「特定のサイトに行きたい」といった、サイト訪問やアクションが目的のクエリ(トランザクショナル・ナビゲーショナル)では表示されにくいということです。キーワード158,542個のSERPs調査結果

しかし、注目すべきは、コマーシャルクエリ──すなわちコンバージョンにも影響し得るキーワードでも、17.7%(約2割)でAIOが表示されているという事実です。AIOは検索結果の最上部に表示されやすいため、購買行動に近い重要なキーワード群においても、徐々にその影響力を強めていることは間違いないでしょう。

▼ カテゴリ別表示率

この傾向は、カテゴリ別の表示率を見るとより鮮明になります。キーワード158,542個のSERPs調査結果

  • 高表示率カテゴリ
    • 医療系(病名・悩み):73.9%
      • 調査キーワード14,347個のうち、10,607個でAIOが出現 
      • このカテゴリのキーワードの大半は情報探索系であり、AIOの表示率も極めて高い結果となりました。
  • 低表示率カテゴリ
    • ファッション系:1.8%
      • 調査キーワード14,402個のうち、わずか257個でしか表示されず 
      • これは、ファッション系のクエリの多くが「ストレートデニム おすすめ」のような、購入を前提としたコマーシャルクエリ(調査では10,883個)であるためだと考えられます。
    • 医療系(病院検索):0.7%
      • 調査キーワード12,158個のうち、わずか89個 
      • 「東京 歯医者 おすすめ」のような病院検索は、特定の場所へ行く(ナビゲーショナル)意図が強いため、AIOの表示はほぼありませんでした。

この結果から、AI Overviewは「検索意図が検索結果上で完結しやすい情報探索系クエリ」を主なターゲットとしており、ショッピングやサイト訪問を前提としたクエリでは、ユーザーのアクションを妨げないよう意図的に表示を控えている傾向がうかがえます。

分析結果②:AIOに「引用されるサイト」の傾向

では、AIOが表示される場合、その「引用元」にはどのようなサイトが選ばれているのでしょうか。

今回の調査では、9つのカテゴリそれぞれについて、AIOに多く引用されているドメインを上位30位まで抽出しました。

  • ファッション系: 表示率は低いものの、引用元は「wear.jp」や「zozo.jp」といった、オーガニック検索でも非常に強いサイトが中心
  • 金融系: 「my-best.com」「diamond.jp」「kakaku.com」など、これもオーガニック検索で上位を占めているサイトが、そのままAIOでも多く引用されていた
  • 転職系: 「doda.jp」「マイナビ転職」など、やはりオーガニック検索の強豪が並ぶ
  • 旅行系: 「jp.trip.com」「jalan.net」といった、自然検索でよく目にするサイトがAIOでも目立つ

他のカテゴリでも、ほぼ同様の傾向が見られました。

ここから分かるのは、「各カテゴリにおいてオーガニック検索(SEO)で強いサイト = AIOでも引用されやすいサイト」という、非常に分かりやすい構図です。

E-E-A-Tに優れ、そのトピックにおける専門性(トピックスオーソリティ)が高いとGoogleに評価されている「常連のサイト」が、AIOの引用元としても選ばれています。これは、ある意味で当然の結果と言えるでしょう。ファッション系・金融系・転職系・旅行系

医療系_病名/疾患/悩み・医療系_美容医療・医療系_病院検索・不動産系

BtoBSaaS系

分析結果③:AIOの「引用」とオーガニック「検索順位」の相関関係

オーガニック検索で強いサイトがAIOでも強いことは分かりました。では、その関係性はどれほど強固なのでしょうか。

「オーガニック検索で1位のページが、そのままAIOに引用されている」のか、この疑問を解明するため、AIOに表示されたリンクURLが、同じキーワードのオーガニック検索で何位にランクインしているのかを調査しました。

なお、AIOには、コンテンツの根拠を示す「参照型リンク」と、本文中から直接遷移できる「直リンク型」の2種類がありますが、今回は両方を対象に調査しています。参照リンク型

直リンク型

▼ 参照型リンクと検索順位の相関AIOに表出する参照リンク型URLの、該当キーワードにのける自然検索順位

  • 相関係数: -0.7753

これは順位と採用数に強い相関を示しており、「オーガニック検索で上位に出てくるURLほど、AIOの参照型リンクとしても採用されやすい」傾向が明確にわかりました。

▼ 直リンク型と検索順位の相関AIOに表出する直リンク型URLの、該当キーワードにのける自然検索順位

  • 相関係数: -0.8263

参照型リンクよりもさらに強い相関が見られました。上位にあるページほど、AIO本文中の「直リンク」としても表出しやすい傾向があるようです。

しかし、ここで注目すべき点があります。グラフを詳細に見ると、確かに上位表示URLの採用率は高いものの、オーガニック検索で30位以下、すなわち「圏外」のURLも一定数、AIOに採用されているのです。

この事実は、「AIOはオーガニック検索の順位を参考にしているが、完全に連動しているわけではない」ことを示唆しています。

深掘り①:なぜ検索31位以下のページがAIOに引用されるのか?

なぜ、オーガニック検索では圏外のページが、AIOでは引用元として抜擢されるのでしょうか。

この理由は、AI検索サービスと従来のオーガニック検索の「仕組みの根本的な違い」にあると私は考えています。

■従来のオーガニック検索
ユーザーが入力した「1つのキーワード」に対し、その「1つの検索意図」を最も満たすページをランク付けして返す。

■AI検索サービス(AIO)
ユーザーが入力したキーワードは、「Query Fan-Out(クエリファンアウト)」という技術を用いて、裏側で複数の関連する「サブクエリ」に分解。そして、それらのサブクエリごとに「再検索(RAG検索)」を行い、得られた複数の情報源をAIが読み取り、複合的な回答を1つにまとめて生成する。Google AI検索サービスの仕組み

このクエリファンアウトこそが、圏外のページが引用される鍵だと私は考えています。

▼ 具体的な事例:「5日で行ける海外」(旅行系キーワード)

キーワード「5日で行ける海外」で検索した際、AIOには5日で観光できるアジア各国を提案する回答とともに、「費用を抑える」「5万円以下で行ける場所」といった付帯情報までも含まれていました。

例:キーワード「5日で行ける海外」のAIOコンテンツ

そして、その「5万円以下」という部分の引用元として、「jp.trip.com」のあるガイドページがリンクされていました。

しかし、このガイドページは、メインキーワードである「5日で行ける海外」におけるオーガニック検索では31位、つまり圏外だったのです。キーワード「5日で行ける海外」のAIOに表出するリンク/URL

そこで私は、AIOが生成したと考えられる「サブクエリ」を疑似的に抽出してみました。Googleの特許等から疑似的にQuery Fan-Outを再現

すると、関連クエリの中に「海外旅行 5万円」というキーワードが見つかりました。

例:キーワード「5日で行ける 海外」の拡張サブクエリ

実際にこの「海外旅行 5万円」というサブクエリで検索すると、件のガイドページはオーガニック検索で2位を獲得していたのです。

▼ この事例からわかること

AIOは「5日で行ける海外」というクエリに対し、「費用も気になるだろう」と推測し、裏側で「海外旅行 5万円」というサブクエリ検索を実行しました。その結果、サブクエリで2位だったページ(メインクエリでは圏外)を情報源として採用したと考える事もできます。

「30位以下のURLがAIOに出る」理由(※想定)

つまり、AIOに引用されるためには、必ずしもメインキーワードで上位表示されている必要はありません。ユーザーの検索ジャーニー(次に知りたくなること)を先読みし、その「次のニーズ(=サブクエリ)」に対する最適な回答コンテンツをサイト内に持っていることが、AIOで引用される可能性を高めるうえで非常に重要だと考えられます。

深掘り②:なぜ検索1位のページがAIOに引用されないのか?

では、逆の疑問も検証してみましょう。オーガニック検索で1位を獲得していれば、AIOに引用される確率は高いはずです。しかし、実際のところはどうなのでしょうか。

▼ 衝撃の事実:1位・2位でも半数以上はAIOに採用されない

今回、AIOが表示されるキーワードにおいて、オーガニック検索で1位または2位に表示されているURLが、AIOに引用されている確率を調査しました。

AIOが表出するキーワードにおける、自然検索1位・2位のURLのAIO採用率

その結果、引用されていたのは全体の48%でした。つまり、残りの52%、すなわちオーガニック検索で1位・2位を獲得しているページの半数以上が、AI Overviewには採用されていないことを意味します。

では、なぜGoogleが自然検索枠で高評価したページが、AIO枠には採用されないのでしょうか。

▼ 具体的な事例:「クラウド 会社で使う」(B2B SaaS系キーワード)

このキーワードで検索すると、AIOが最上部に表示され、その下にオーガニック検索結果が続きます。例:キーワード「クラウド 会社で使う」

自然検索枠には当カテゴリ「BtoB SaaS系」で最もAIO引用数が多いit-trend.jpとmy-best.comがランクインしています。

この状況だけを見ると、当キーワード「クラウド 会社で使う」でも自然検索上位のページがAIO枠にも出現しても自然な様に思えます。

しかし、実際にはこれら上位2つのページはAIO枠には一切採用されなかったのです。

では、なぜ採用されなかったのでしょうか?それにはAIOが解決しようと試みている検索意図と、自然検索枠が解決する検索意図が異なる事を理解する必要があります。

AIOが回答した内容は、「クラウドとは何か」という概要、導入のメリット、注意点、代表的なサービスなど、潜在的な検索意図まで網羅されたものです。AIOコンテンツと当該キーワードのSERP

一方、オーガニック検索の1位・2位(mybest、ITトレンド)は、「法人向けクラウドサービスの比較・ランキング」ページであり、特定の意図に特化した内容です。

もうお分かりかと思います。これは「検索意図のズレ」です。

オーガニック検索の上位ページは、「おすすめランキング」という明確な意図には的確に応えていますが、AIOがカバーしようとした「メリットは?」「注意点は?」といった、より広範な検索意図には対応していません。

なぜ自然検索で上位かつAIO採用率が高いドメインでもAIO表出しないのか

AIOはクエリファンアウトによってこれらのサブクエリも検索しましたが、ランキングページにはその回答が含まれていなかったため、引用元として採用されなかったのです。

▼ 具体的な事例:「座ったまま寝る 病気」(医療系キーワード)

では、もう一つ別の事例を用いて説明します。医療系のインフォメーショナルクエリである 「座ったまま寝る 病気」です。

このキーワードで検索すると、自然検索の1位には「ドクターズ・ファイル」という権威性の高い医療情報サイトが表示されます(※調査時点)。しかし驚くべきことに、AIOが生成した回答文には、このドクターズ・ファイルへのリンクが一切含まれていませんでした。

一方、自然検索では10位に位置する「ユビー(Ubie)」というサイトが、AIOの引用元として何度も取り上げられていたのです。

「座ったまま寝る 病気」の検索結果

なぜ1位の「ドクターズ・ファイル」は引用されなかったのか?

ドクターズ・ファイルのページは、「ナルコレプシー」という疾患について非常に詳しく解説した質の高いコンテンツです。構造化マークアップも完備されており、監修医師も明記されており、E-E-A-Tの観点からも申し分ありません。

上位ページにも関わらずAIO枠へ採用されなかったページ

それなのに、なぜAIはこのページを引用しなかったのでしょうか。

1. 「症状」vs「病名」のミスマッチ

まず、検索キーワードは「座ったまま寝る 病気」であり、これは「症状」 を起点とした検索です。したがって、検索した時点ではユーザーはまだ、自分がどんな病気なのか分かっていません。一方、ドクターズ・ファイルのページは「ナルコレプシー」という特定の「病名(疾患名)」を解説したページでした。

AIは「座ったまま寝てしまう」という悩みに対し、考えられる可能性を幅広く提示しようとします。ナルコレプシーはその一つに過ぎません。AIの視点では、このページは「回答の一部」に留まり、全体像を説明するには情報が不足していると判断された可能性があります。

2. 「クエリファンアウト」への回答/根拠としての機能は無かった

AIOのコンテンツ内容から、AIはおそらく次のようなサブクエリを生成していると考えられます。

  • 座ったまま寝てしまう 原因は?
  • 考えられる病気は?(過眠症? 睡眠不足? 薬の副作用?)
  • 対処法は?
  • 何科を受診すべき?

実際に生成されたAIOの回答を見ると、「ナルコレプシー」だけでなく、「睡眠不足」「睡眠覚醒リズムの乱れ」「傾眠傾向」といった複数の要因が網羅され、さらに「行うべきこと」として生活習慣の改善なども提案されています。

想定されるQFOのサブクエリ

ドクターズ・ファイルのページは、ナルコレプシーという「一点」については深い情報を持っていますが、AIが求める「原因の網羅性」や「対処法の広がり」という点では、サブクエリ群にはマッチしなかったと考えられます。

3. 「病名起点」ゆえのクエリ適合度の差

ドクターズ・ファイルのページは「ナルコレプシー」を病名起点で網羅的に解説しており、見出しや構造化データ、監修医師の明記など、品質要件は満たしています。

一方、今回のクエリは「座ったまま寝てしまう」という症状起点であり、AIOは原因候補の列挙や初期対応の要点など、横断的な概要を短く提示しがちです。

ドクターズ・ファイルのページにも「座ったまま、患者がどれくらいの時間起きていられるかを調べる覚醒維持検査も行い」といった記述はありますが、これは検査手順の説明であり、クエリの意図の直接的な回答としては弱い位置づけです。この適合度の差も、当該時点で出典に採用されなかった一因と考えられます。

なぜ10位の「ユビー」は採用されたのか?

一方で、自然検索10位の「ユビー」はなぜ選ばれたのでしょうか。ユビーのページを見ると、ドクターズ・ファイルとは対照的な特徴を持っていることがわかります。

自然検索10位にも関わらずAIO枠採用回数が多いページ-ユビー

1. クエリへの「直球回答」

ユビーのページタイトルや見出しには、「過眠症だと座るとすぐ眠くなるものですか?」といった、検索クエリと非常に親和性の高いフレーズが使われています。

さらに、その問いに対して「過眠症の可能性があります」と、冒頭でダイレクトかつ簡潔に回答しています。

問い-過眠症だと座るとすぐ眠くなるものですか?

この「問い」と「答え」のセットが明確であること、AIにとって非常に引用しやすい構造だったと言えるでしょう。

2. AIが採用しやすいマイクロスニペット

ユビーの各ページは、ひとつひとつの悩みや疾患に個別対応しており、ダイレクトな回答コンテンツは非常に短い文章で構成されています。

ユビーの各ページ

なぜこの短さでAIに選ばれたのでしょうか。それは、AIが「クエリファンアウト」で広げた答えや参考/根拠が、この短い文章に要点だけ凝縮されていたためです。

この情報ブロックの構成が、AIにとって情報を探索しやすく、引用しやすい構造だったと考えられます。

例:ubie.app/byoki_qa/*配下のページ(出展:ahrefs)

また、詳細な悩みごとに個別ページが設けられ、短く回答されている点も、引用元として採用されやすいページ構成だと考えられます。

3. 権威性

もちろん、ただ短ければ良いわけではありません。ユビーは医師監修が入り、短いながらも情報の信頼性(E-E-A-T)が担保されています 。

「信頼できる情報源」であり、かつ「AIが処理しやすい構造」であること。これらが揃うことで、自然検索の順位を超えてAIOの採用に至ったと考えられます。

深掘り③:「引用」は「ブランド推奨」につながるか?

ここまでの調査で、「AIOに引用されるロジック」は見えてきました。

  1. オーガニック検索の順位と相関はある
  2. AIOはサブクエリで広範な意図を拾うため「トピックの専門性」が重要

しかし、マーケティング担当者として本当に知りたいのは、その先です。

AIOは情報探索系のクエリで多く表示されます。ユーザーはAIOの要約を読むだけで満足し、わざわざ引用元リンクをクリックしてサイトを訪問する可能性は低いのではないでしょうか。実際、サーチコンソールではAIO経由のクリックは計測できず、流入への貢献は限定的だと私は考えています。

だとすれば、AIOにおける真のマーケティング価値は「流入(クリック)」ではなく、AIが生成する回答本文中で自社の「ブランド名」や「商品名」が推奨されること、すなわち「ブランド表出」にあるはずです。

そこで、最大の疑問として、「AIOに引用されること」と「AIOにブランド名が推奨されること」は比例するのかどうかを調査しました。

そこで今回は、AIOコンテンツ(AIO SERP)をすべて取得し、コンテンツ内に表示されるエンティティを抽出・集計しました。これにより、公式サイトの引用数と、そのサイトが取り扱っている商品やブランドの表出に相関があるかを調査しました。

①AIOコンテンツを取得②抽出および分類③エンティティを抽出

ケーススタディ1:美容医療カテゴリ

競争が激しく、各社がSEOに注力している「美容医療」カテゴリ(AIO表示率71%)を例に取ります。

▼ 調査結果:引用(ドメイン)  

まず、AIOに「引用された」ドメインを集計しました。結果、「湘南美容クリニック(SBC)」の公式サイト(s-b-c.net)が、AIO出現キーワード1,628個のうち857個(52.6%)で引用されており、圧倒的な1位でした。

「医療系_美容医療」系キーワードでAIO出現数が多いドメイン(AIO出現KW数=1628)

▼ 調査結果:推奨(ブランド名)  

次に、AIOの「回答本文中」に出現したブランド名(エンティティ)を集計しました。結果、固有名詞として最も多く登場したのは「湘南美容クリニック」でしたが、その数はわずか22件(1.35%)でした。

「美容医療」の全エンティティ→店舗名/社名/組織名に限定

▼ 衝撃の事実  

AIOの半分以上(52.6%)で「引用元」として使われているにもかかわらず、「ブランド名」として推奨されたのは、たったの1.35%です。  

念のため、SBCが引用元となった857件のAIOに絞って分析しても、ブランド名が言及されていたのは11件のみ。率にして1.2%でした。

「医療系_美容医療」におけるs-b-c.netのAIO採用数と本文ブランド言及の有無

▼ 考察:なぜ引用されても、推奨されないのか?  

これは、「一般合意」が形成されていないからだと私は推測します。

SBCの公式サイトがSBCを推奨するのは当然ですが、競合である品川美容外科や城本クリニックがSBCを推奨することはありません。また、この領域では、金融系のようにアフィリエイトや第三者による比較サイトが多くないため、AIが「複数の信頼できる第三者が共通してSBCを推奨している」という事実、すなわち「一般合意」を確認できなかったのです。

結果として、SBCのサイトは「まぶたを薄くする方法」といったテーマの「情報源」としては多く引用されたものの、「まぶたを薄くするならSBCがおすすめ」といった「推奨」には至らなかったのです。

検索:瞼を薄くする

ケーススタディ2:金融カテゴリ

対照的な結果が出たのが「金融」カテゴリです。

▼ 調査結果:推奨(ブランド名)  

AIOの回答本文を分析すると、「楽天カード」「JCB」「SBI証券」「三井住友カード ナンバーレス」といった具体的なブランド名・商品名が多数出現していました。「金融系」のAIOコンテンツに表出するエンティティ

▼ 分析:なぜ金融カテゴリでは推奨が多いのか?  

美容医療と何が違うのでしょうか。

「楽天カード」が推奨されているAIOの引用元を分析したところ、引用元の85.3%が「楽天カード公式サイト以外」のドメインでした。「楽天カード」が出現するAIOで引用されているドメイン

その引用元とは、「マイベスト」「ダイヤモンド・オンライン」「価格.com」など、信頼できる第三者による比較・レビューサイトです。「楽天カード」が出現するAIOで引用されているドメイン(一部)

▼ 結論  

金融カテゴリでは、「楽天カードがおすすめ」と、複数の信頼性の高い第三者サイト(比較サイト)が言及しているため、AIはそれを「一般合意」と判断し、回答本文中で「楽天カード」を推奨したと考えます。

結論:引用以上に「信頼性が高い第三者からの言及」がブランド推奨のカギ

今回の15万キーワードに及ぶ調査を通じて、AI Overviewに関するいくつかの重要な事実が見えてきたと私は考えています。

1. AIOのロジックはオーガニック検索とは異なる

AIOは「クエリファンアウト」によって、ユーザーの次のニーズまで先回りし、広範な回答を生成します。  

もはや、オーガニック検索のように「1位を取れば勝ち」という単純な世界ではなくなりました。

2. AIOの「引用」にはトピックの専門性が不可欠

AIOに引用されるためには、メインキーワードだけでなく、関連するサブクエリ(潜在ニーズ)まで網羅するコンテンツ群──すなわち「トピックの専門性」を高めることが重要です。  

それが結果的に、AIOへの引用率を高めることにつながります。

3. 「引用」と「ブランド推奨」はまったくの別物である

今回の調査で最も衝撃的だったのは、「引用されること」と「ブランドが推奨されること」は比例しないという事実です。  

美容医療の事例のように、いくら多く引用されても、それがブランドの推奨につながらなければ、マーケティング上の効果は限定的です。  

言い方を変えれば、AIの回答を生成するための素材として情報を提供しただけとも言えるでしょう。

4. 真のゴールは「一般合意」によるブランド推奨

AI検索時代におけるSEOの真のゴールは、AIの回答文中で自社ブランドを名指しで推奨してもらうことです。  

そして、金融カテゴリの事例が示したように、いくら自社サイトが「自社がおすすめ」と主張しても、それだけでは不十分です。  

必要なのは、「信頼できる第三者サイト(比較サイト、レビューサイト、専門メディアなど)からのポジティブな言及」です。  

示唆と考察

今回の分析で改めてはっきりしたのは、「AIに引用されること」と「AIに推奨されること」は、まったく別のものだという点です。オーガニック順位とAIOでの引用には一定の相関が見られる一方で、AIO内のブランド推奨は、順位や被リンクだけでは説明できず、オフサイトでの評価構造やブランドの一般合意が強く効いているように見えました。

そのうえで、実務的な示唆としては大きく3つあると感じています。

  1. 従来SEOの「土台づくり」は依然として必須
     一次情報・網羅性・テクニカルSEOなど、クロール/インデックス前提の土台がないと、そもそもAIOの「素材」にすら乗れない、という意味で従来SEOは引き続き重要です。
  2. AIOで「推奨される」ための別レイヤーの設計が必要
     レビューサイト、比較メディア、専門家のブログ、SNS など、AIが「第三者評価」として拾いやすいソースで、ポジティブな言及をどう積み上げるか。ここはリンクビルディングだけではなく、PR・プロダクト・コミュニティをまたいだレピュテーション設計の領域だと捉えるべきだと感じました。
  3. KPIも「順位・流入」から「想起・推奨」へ拡張する必要がある
     これからは、ランキングとトラフィックだけではなく、
    ・AIO/AI Mode でブランドがどの程度「引用」されているか
    ・どのクエリ/サブクエリ文脈で「自社が推奨」されているか
    といった指標を併せてトラッキングしないと、正しくLLMO施策の成否を評価しきれません。

言い換えると、我々が最適化すべき対象は「Googleの順位アルゴリズム」単体ではなく、AIが世界をどう要約し、その中でどのブランドを代表として選ぶかというレイヤーに移行しつつあります。今回の15万キーワードのデータは、そのパラダイムシフトがすでに始まっていることを示しているように思います。

SEO担当としては、アルゴリズムハッカーではなく「顧客から支持されるブランドを共に作り、顧客からの一般合意を設計し、そして計測、改善するマーケター」として、自社の施策ポートフォリオを組み直していくこと。これが、LLMO時代に生き残るための次の一手であり、これからのSEOマーケターに求められる役割だと考えています。

実践的なアクションプラン

【1】施策の方向性

自社サイト内でどれほど優れたコンテンツを展開しても、それだけでは情報の出典にとどまる可能性があります。自社サイトを“顧客の受け皿”としつつ、合わせて外部での言及や評価を増やすマーケティング設計と施策実行こそが、AIに自社商品やブランドを推薦されるための近道であり、LLMO施策です。少なくとも現時点では、「引用されること」自体をKGIにするのはおすすめできません。

自社サイト内での高品質な情報発信(オンサイト)

  • 顧客ターゲットや意図に沿ったコンテンツを、E-E-A-Tを担保して制作する。
  • AIに“引用されやすい一次情報”(独自データ、明確な要件・価格・制約、FAQ等)を充実させる。
  • 情報ブロックごとに文節を設計し、見出し→要約→主張→エンティティ→出典などブロック化で“拾われやすい断片”を増やす事で採用率を高める。
  • 引き続き、従来のSEOを完備する。

自社サイト外でのマーケティング・PRの強化(オフサイト)

  • 権威あるメディア、業界団体、学術機関や公的機関による一次的な言及を増やし、外部からの信頼獲得網を広げる。
  • オフサイト施策(レビュー、事例公開、広報活動)により、AIOが参照する情報源とレピュテーションの幅を広げる。

【2】効果計測

AI検索の成果は「AIによるブランドや商品の推薦」そのものです。これは自社サイト内のデータだけでは測れないため、外部観測+自社サイト内で取得できるデータをそれぞれ取得する必要があります。

従来のSEOで観測してきたKPIと合わせ、下記も計測対象とする:

AI検索結果上でのブランド表出率

対象顧客が検索するであろう推定検索プロンプト(キーワード)のAI検索結果(AIOやAI Mode、ChatGPT等)に自社ブランドや商品名が表出するか否かを観測する。

ブランド推奨スコア(センチメンチ分析)

AIOやAI Mode、ChatGPT等でのブランド表出がどのような表現(センチメント)と共に表出しているかスコアリング。これにより、単にブランドの表出有無だけではなく、その表出がユーザーの行動を喚起させるポジティブな表現なのか否かを観測する。

指名検索による流入数とCV数

AI検索を通じて自社ブランド名や商品名を知ったユーザーが最終的に検索し、流入してくるであろう指名検索流入先LPの検索流入数とCV数を間接的な「AI検索の成果」として観測する。

なお、これらの観測は、独自のデータ基盤を構築するか、ProfoundやAhrefs、SEMRush OneなどのAI検索効果測定ツールを活用することで実施可能です。

従来のSEO施策に加え、前述の施策やAI検索に対応したKPIの新設と観測基盤を整備することで、AI検索に適した施策の実行とその効果測定が可能になります。

本調査レポートの要点

  • AIOの表示率と影響範囲: AIOは情報探索系クエリを中心に検索結果の約4分の1(25.2%)で出現しており、コマーシャルクエリにも影響を広げ検索体験のスタンダードとなりつつある。
  • AIO引用ロジックの転換: オーガニック検索順位とAIO引用には相関があるものの、検索1位でも半数以上(52%)が引用されず、「Query Fan-Out」によるトピックの専門性が引用の鍵を握る。
  • 「引用」と「ブランド推奨」の決定的な乖離: AIOに引用されることは、回答本文中でブランド名が推奨されることとはまったく比例しない(美容医療カテゴリでは推奨率がわずか1.35%)。
  • 第三者メディア上の言及がブランド引用のカギ: AIがブランド名を推奨するのは、信頼できる第三者サイト上でポジティブな言及が多数存在する状態を認識した場合であり、これがAI検索時代の新たなSEOゴールである。

AIが多様な情報源から「信頼でき、広く認められている」と認識できるだけの評判を、ウェブ全体で獲得すること。 これこそが、AIO時代において私たちが目指すべき、新たなSEOの形なのかもしれません。

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担当メンバー 平 大志朗 | SEO研究チャンネル

2012年ごろからSEO業界に携わり、検索エンジンマーケティングを中心としたデジタルマーケティングの分野で活躍。 2020年から 「SEO研究チャンネル」 を立ち上げ、SEOに関する知見を発信。

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監修者 竹内 渓太

株式会社リクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やB2Bマーケティングなど多種多様な業務を経験。その後、株式会社LANYを創業し、Webメディア・サービスサイト・データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでいる。

X・YouTubeチャンネルで「SEOおたく」としても情報発信中。著書『強いSEO』『強いBtoBマーケティング』『強いLLMO』(エムディエヌコーポレーション)出版。

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【サービス概要資料】LLMOコンサルティング

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