定量分析

AI OverviewsとWeb記事におけるブランド言及の相関分析

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目次

Google検索に実装された「AI Overviews(旧SGE)」。この新たな機能は、ユーザーが求める情報をAIが要約して検索結果の最上部に提示するもので、私たちの情報収集のあり方を大きく変えようとしています。

「LLMOとは」のAI Overviews「LLMOとは」のAI Overviews

企業のマーケティング担当者にとって、この変化は無視できません。AI Overviewsが表示されるキーワードでは、検索結果のクリック率が34.5%下がるというデータも出ています。

自社ブランドやサービスがAI Overviewsにどのように引用されるか、あるいは全く引用されないのかは、事業の成果に直結する新たな課題です。

私たち株式会社LANYの社内シンクタンク「LANY LLMO Lab.(LLL)」では、この変化に対応するためのヒントを探るべく、「AI Overviewsで引用されるブランドと、検索上位記事におけるブランド言及の関係性」について定量的な調査を実施しました。

本レポートではその分析結果とそこから導かれる示唆を解説します。

調査概要:AI Overviewsとブランド言及の関係性の分析方法

本調査は、AI Overviewsがどのような情報源を基にブランドを選定しているのかを解明することを目的としています。

私たちは「AI Overviewsで引用されるブランドは、そのトピックに関する検索上位記事群の中で、より広く、より多く言及されているのではないか」という仮説を立て、以下のフローで検証を行いました。

  • 調査期間: 2025年7月1日~2025年7月14日
  • 調査対象クエリ: 「VODサービス おすすめ」や「クレジットカード おすすめ」「転職サイト おすすめ」といった、消費者の意思決定に直結する比較・推薦系のクエリを60個以上選定。

【調査フロー】

  1. 上位記事の収集: 各調査クエリで検索した際の上位20記事のURLを収集
  2. ブランドの抽出: 収集した記事内で言及されているブランド名を機械的に抽出
  3. 指標の算出:ブランドごとに、以下の2つの指標を算出
    • 総言及数(total_count): 上位20記事全体で、そのブランド名が何回出現したか
    • 言及サイト数(site_count): 上位20記事のうち、何記事でそのブランド名が言及されていたか
  4. AI Overviewsとの比較: 最後に、各ブランドがAI Overviewsで引用されたかどうか、またその際の表示順位を記録し 、上記指標との関係性を分析

今回の調査は、AI Overviewsの中でも、下記の図の左にある「AIによる要約」側を対象としています。リンクが引用されるか否か、ではなく、要約内にブランド名が表出するか否か、を分析対象としています。よって、調査対象クエリも「おすすめ系」などの、推奨ブランド名が羅列されるクエリとしています。

AI Overviewsの中でも、左赤枠の「AIによる要約」を対象

分析結果①:AIOv掲載ブランドは「広く、多く」言及されていた

最初の分析で、AI Overviewsに掲載されたブランドと、されなかったブランドの間には明確な違いが見られました。

以下のグラフは、AI Overviewsに掲載されたブランド群(青色)と、されなかったブランド群(赤色)で、「総言及数」と「言及サイト数」の分布を比較したものです。

左:総言及数(total_count)の分布、右:言及サイト数(site_count)の分布

ご覧の通り、AI Overviewsに掲載されたブランド(青色)は、掲載されなかったブランド(赤色)に比べ、明らかにグラフの右側、つまり数値が高い方に分布しています。これは、AI Overviews掲載ブランドが、非掲載ブランドよりも「より多くの記事で(広く)、より多くの回数(多く)」言及されていることを視覚的に示しています。

この差が偶然ではないことを確認するため、統計的な検定(マン・ホイットニーのU検定)を行ったところ、両指標ともに「統計的に有意な差がある(p値 < 0.001)」という結果でした。

さらに、この差の大きさを「効果量」という指標で見ると、総言及数(r ≃ 0.38)は「中〜やや大きい効果」、言及サイト数(r ≃ 0.30)は「中程度の効果」が確認されました 。

「効果量」という指標で整理した時の結果

これは、検索上位記事における言及の「量」と「広さ」が、AI Overviewsに掲載されるかどうかを左右する重要な要因であることを裏付けています。

分析結果②:AI Overviewsの「上位表示」と言及数にも関連性あり

では、AI Overviewsに「掲載されるかどうか」だけでなく、「より上位に表示されるか」にも、これらの指標は関係するのでしょうか。

以下の散布図と相関ヒートマップは、AI Overviewsの表示順位と各指標の関係を示したものです

左:AIOv順位 vs 総言及数、右:AIOv順位 vs 言及サイト数左:AIOv順位 vs 総言及数、右:AIOv順位 vs 言及サイト数

各指標間の相関ヒートマップ相関ヒートマップを見ると、AI Overviewsの順位(AIOv_rank_percentile)と、総言及数(total_count_ratio)、言及サイト数(site_cnt_ratio)の間には、それぞれ「-0.31」と「-0.23」という負の相関が見られます。

これは、「総言及数や言及サイト数が多いブランドほど、AIOvでより上位に表示される傾向がある」ことを示唆しています。

ただし、相関係数は中程度であり、言及数が多ければ必ず上位表示を保証されるわけではありません 。しかし、AI Overviewsでの上位表示を目指す上で、これらの指標が無視できない関連要因であることは確かです。

結論と考察

AI Overviewsで自社ブランドが引用されるためには、検索上位の記事群において、「いかに多くのメディアで(言及の広さ)」、そして「いかに多く名前が挙げられているか(言及の量)」が極めて重要です。

これは、従来のSEOで重視されてきた「自社サイト(オウンドメディア)の検索順位」という考え方から、一歩進んだ視点を私たちに求めます。これからは、「検索結果ページ(SERPs)全体で、自社ブランドがどれだけ存在感(プレゼンス)を示せているか」が問われる時代になると言えます。

Googleは、AI Overviewsにも、AIモードにも、クエリファンアウトという仕組みを利用しています。クエリファンアウトとは、特定の質問(検索クエリ)に対して、回答を生成する上で、同時に複数のクエリでの検索を実行し、ウェブ上の膨大な情報から、質問に合った関連性の高いコンテンツをより多く見つける仕組みのことです。

クエリファンアウト概要図

よって、今回の分析のように単一クエリの検索結果のみを利用しているわけではない点には注意が必要です。クエリファンアウトも鑑みた上で、より広範囲のクエリの検索結果上位サイトにて、自社のブランド名を言及してもらうことが重要になるでしょう。

明日から実践すべきアクションプラン

この新しい潮流に対応するため、以下の2つのアクションを推奨します。

  1. PR戦略の再定義:第三者メディアでの「自然で複数回」の言及を狙う
    これまでのPR戦略に加え、「第三者メディアの記事内で、自社ブランド名が自然な文脈で、かつ複数回言及される」ことを意識した働きかけが重要になります。単に記事に名前が載るだけでなく、そのトピックにおける主要な選択肢の一つとして認識され、語られることを目指しましょう。
  2. KPIのアップデート:「検索順位」から「SERPs内プレゼンス」へ
    追うべき指標を、自社サイトの順位だけに限定せず、「対象キーワードの検索結果上位20サイトにおける、自社ブランドの言及サイト数・総言及数」といった、SERPs全体でのプレゼンスを測るKPIにアップデートすることを検討すべきです。これにより、オウンドメディア施策だけでなく、アーンドメディア(PR)やペイドメディア(広告)も含めた統合的なブランド戦略の成果を可視化できます。

本調査レポートの要点

  • AI Overviews掲載の鍵: 検索上位記事におけるブランドの「総言及数(量)」と「言及サイト数(広さ)」が、AI Overviewsに掲載されるかを左右する極めて重要な要因。
  • 上位表示との関連: これらの指標は、AI Overviews内での表示順位とも一定の相関があり、上位表示を目指す上でも無視できない。
  • 新時代の戦略: これからのマーケティングでは、自社サイトの順位だけでなく、検索結果全体での「ブランドプレゼンス」を意識し、PRなどを含めた統合戦略を推進することが成功の鍵となる。
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担当メンバー 津濱 ひかり

東京科学大学(旧:東京工業大学)の大学院時代にSEOに興味を持ち、株式会社LANYでインターンとしてデータ分析に従事。並行してデータサイエンスを学び、現在は事業会社でデータサイエンティストとして、営業業務の改善を目的とした社内ツールの企画・改善を担当。大規模言語モデル(LLM)を活用した機能開発にも取り組んでいる。

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監修者 竹内 渓太

株式会社リクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やB2Bマーケティングなど多種多様な業務を経験。その後、株式会社LANYを創業し、Webメディア・サービスサイト・データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでいる。

X・YouTubeチャンネルで「SEOおたく」としても情報発信中。著書『強いSEO』『強いBtoBマーケティング』『強いLLMO』(エムディエヌコーポレーション)出版。

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【サービス概要資料】LLMOコンサルティング

【サービス概要資料】LLMOコンサルティング

LANYのLLMOコンサルティングのサービス概要資料です。LANYのLLMOコンサルティングは、企業がAIにどう見られているかを可視化し、選ばれるブランドづくりを支援する包括的なサービスです。

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