AIモード参照記事の半数はメインクエリでSEO順位圏外!2,000回の試行から見えた、検索順位との相関とサブクエリの存在
Google検索に実装された「AIモード」は、従来の検索結果とは根本的に異なるアプローチで情報を提示します。AIが複数のサイトから情報を収集・分析し、統合された回答を生成するこの機能は、企業のSEO戦略に新たな課題をもたらしています。
前回の調査では、AIモードが参照した記事の中で「どのようなブランドが言及されやすいか」を分析しました。その結果、多くのサイトで広く言及されているブランドほど、AIモードの回答に登場しやすいことが判明しました。
しかし、そもそも「AIモードはどのような記事を参照しているのか?」という根本的な問いは残されたままでした。
AIモードでは「クエリファンアウト」という技術を使い、関連する複数の検索を同時に発行し、サブトピックや複数のデータソースを横断して結果を取得します。つまり、AIは回答を生成する際に、ユーザーの質問から複数の関連クエリを自動生成し、それぞれで検索を実行してウェブサイトから情報を収集しているのです。
この仕組みにより、従来のSEOで重視されてきた「主要検索語での順位」だけでなく、「そこから派生する関連語句での表示」も重要になる可能性があります。
そこで今回は、約2000回という大規模な検索実行により、「AIモードで参照される記事の特徴」を定量的に解明しました。本レポートではその分析結果と、そこから導かれる戦略的示唆を解説します。
調査概要:AIモードにおける参照記事の要因分析
本調査は、AIモードがどのような要因で記事を選定し、どの程度の頻度で参照しているのかを解明することを目的としています。
前回の調査では「参照された記事を元にどのブランドが選ばれるか」に焦点を当てましたが、今回は一歩手前の「そもそもどの記事が参照されるのか」を明らかにします。
AIモードは回答生成時に複数のウェブサイトから情報を収集することから、私たちは「AIモードで高確率で参照される記事は、検索クエリから最も派生の少ないクエリ(ここではメインクエリと呼ぶ)でSEO上位の記事ではないか」という仮説を立て、以下のフローで検証を行いました。
調査概要
- 調査対象クエリ:「ドラッグストアで購入できるおすすめのシャンプー」
- 実施回数:約2,000回
- 分析対象:参照された記事105件(重複除去後)
- 言葉の定義
- メインクエリ:質問クエリから最も派生の少ないクエリをメインクエリと定義する
- 本分析では「ドラッグストア シャンプー おすすめ」をメインクエリとする。
- サブクエリ:メインクエリから派生した関連クエリ
- メインクエリ:質問クエリから最も派生の少ないクエリをメインクエリと定義する
調査フロー
1.AIモードが参照した記事の特定
- 「ドラッグストアで購入できるおすすめのシャンプー」でAIモードが参照した記事のURLを各回ごとに記録。
2.参照パターンの分析
- 約2,000回の検索で、各記事が何回参照されたかを集計。
- 参照回数の分布を分析し、高確率で参照される記事と低確率で参照される記事のパターンを確認。
3.SEO指標との関連分析
- 各記事について以下を調査:
- メインクエリでのSEO順位
- 月間オーガニックトラフィック数
4.相関関係の検証
- メインクエリSEO順位と参照回数の関係を、以下2つの観点で分析:
- 参照の安定性:高確率で参照される記事はメインクエリ経由で参照された記事なのか
- 参照頻度と順位の関係:SEO順位が高い記事ほど、AIモードでも参照されやすいのか
分析結果①:参照の安定性
AIモードで参照された記事の参照回数を棒グラフで表すと以下のようになります。
上位数件の記事に参照回数が集中しており、特にトップ記事では参照回数2,000回と突出しています。8記事は1,000回、つまり2回に1回の頻度で参照されていることもわかります。一方で、多くの記事は100回未満にとどまり、10回未満のものも多数見られます。
このことから、AIモードでは限られた記事が集中的に参照されており、全体として強いロングテール構造を示していることがわかります。
次に、参照回数とメインクエリのSEO順位、月間トラフィックの関係を分析しました。以下に参照回数上位25位までのデータを示します。
その結果、AIモードで参照頻度の高い記事のうちの半数はメインクエリでもある程度上位表示されやすい傾向にあることがわかりました。
一方で、参照頻度の高い記事のうち残りの半数は、メインクエリではSEO順位が圏外であり、これらの記事はサブクエリ経由でAIモードに参照されたと考えられます。
このことは、AIモードがメインクエリだけを高頻度で参照しているわけではなく、一定の再現性をもって生成されるサブクエリを通じて記事を参照している可能性を示しています。
つまり、AIモードの内部には「毎回似た形で生成されるサブクエリ」が存在しており、それらを通じて同一の記事が繰り返し参照されていると考えられます。
また、これらのサブクエリ経由の記事は月間トラフィックが比較的少ない記事も散見されることから、サブクエリには検索ボリュームの小さいロングテールクエリを含んでいる可能性があります。
もしこの見立てが正しければ、従来のSEOではROIが低いと判断されがちなこれらのニッチなクエリが、AIモードでは参照頻度の向上に寄与する新たな要因となっていると考えられます。
まとめると、AIモードでの高参照記事になるには、
① メインクエリである程度上位を狙うことに加えて、
② メインクエリから派生する“再現性の高いサブクエリ”を特定し、最適化すること
が有効です。
定義
- メインクエリSEO順位:AIモード検索日時から1週間前のSEO順位
- 「999」は圏外を示しています
- 月間トラフィック:月間オーガニックトラフィック推定値
分析結果②:参照頻度と順位の関係
前述の結果から、メインクエリではある程度SEOで上位を獲得することが、AIモードで参照されるために重要であることがわかりました。
ここではさらに、SEO順位が高いほど参照回数も増えるのかを確認するため、AIモードでの参照回数とSEO順位の関係を分析しました。
以下の散布図では、各記事のメインクエリにおけるSEO順位と、その記事がAIモードで参照された回数を比較しています。なお、参照回数は対数スケールで表示しています。これは、最大2,000回から最小1回まで大きな開きがあり、通常のスケールだと上位数記事だけが目立ち、大半のデータの傾向が見えなくなってしまうためです。また、メインクエリでSEO順位が圏外となる記事は除外しています。
分析の結果、両者の間には相関係数 r = -0.41 の中程度の負の相関が確認されました。
つまり、AIモードで参照される回数が多い記事は、SEO順位が高い傾向にあります。
この傾向は、Google公式の見解にも一致しています。
「SEO のベスト プラクティスは、引き続き Google 検索の AI 機能(AI による概要や AI モードなど)でも有効です。
AI による概要や AI モードにコンテンツが表示されるための追加要件はなく、特別な最適化を行う必要もありません。」

本分析ではメインクエリを対象に、参照回数とSEO順位の関係を調査しました。
一方で、Google公式の見解を踏まえると、サブクエリにおいても同様に、SEO順位が高い記事ほど参照回数が多くなる傾向があると考えられます。
つまり、AIモードでの参照回数を増やすためには、メインクエリ・サブクエリいずれにおいてもSEO上位表示を狙える記事を作成することが重要です。
結論
本分析の結果、AIモードが高確率で参照する記事は、「メインクエリ経由」と「サブクエリ経由」の2つで構成されていると考えられます。
- メインクエリ経由
- ユーザーの質問を直接キーワード化した主要クエリ経由で参照
- SEO順位が高い記事ほどAIモードで安定的に参照されやすい
- サブクエリ経由
- メインクエリから派生した関連クエリ経由で参照
- SEO順位が高い記事ほど参照される可能性が高く、特に“再現性の高いサブクエリ”経由の記事が繰り返し参照される傾向
- ロングテールクエリも含まれる
示唆と考察
AIモード時代のSEOでは、特定のメインクエリだけでなく、AIがクエリファンアウトによって生成するサブクエリへの対策も重要になってきます。
ただし、すべてのサブクエリが同等に重要というわけではなく、AIが繰り返し生成する「再現性の高いサブクエリ」と、そうでない一過性のクエリが存在します。
今後は、こうした再現性の高いサブクエリで上位表示を獲得できるかどうかが、AIモードでの安定的な参照を左右するポイントになります。
また、本分析からわかったように、SEO順位が高い記事ほどAIモードでも参照されやすいことから、まずはメインクエリや再現性の高いサブクエリでSEOを強化していくことが有効です。
とはいえ、再現性の高いサブクエリの特定は容易ではありません。
そのため、第一段階としてはメインクエリでのSEO最適化を確実に行い、次のステップとして再現性の高いサブクエリを補完的に対策していくのが現実的です。
さらに、サブクエリにはロングテールクエリも多く含まれるため、従来のSEOでは軽視されがちだったこれらのクエリにも目を向けることで、AIモードでの参照機会を広げられる可能性があります。
実践的なアクションプラン
| フェーズ | 目的 | 主な施策 |
|---|---|---|
| ①メインクエリ対策 | 安定的な参照の獲得 |
|
| ②再現性の高いサブクエリ対策 | 補完的参照の獲得 |
|
次の分析ステップ
本調査では、「ドラッグストアで購入できるおすすめのシャンプー」を対象にAIモードの参照構造を分析しましたが、AIモードが実際にどのクエリで各記事を参照しているのかはブラックボックスであり、現状のデータから直接観測することは容易ではありません。
したがって、今後は記事ごとのクエリ構成や検索順位情報をもとに、クエリファンアウトの影響を間接的に推定する分析アプローチに取り組むことが次の課題となります。
本来であれば、AIモードが生成する再現性の高いサブクエリを特定し、そのクエリでSEO対策を行うのが理想です。
その特定を可能にするため、私たちは以下の具体的な検証ステップに取り組みます。
【次期検証の目的とステップ:再現性の高い派生クエリの特定】
AIが繰り返し検索する再現性の高い派生クエリを特定し、AIモード攻略の新たな指針を導き出します。
仮説: 参照回数の多い記事は、AIが生成する派生クエリで検索順位20位以内に入っている可能性が高い。(AIは検索順位が高い記事を参照する傾向にあるため)
検証ステップ
- 参照クエリの抽出:参照された105記事それぞれについて、Ahrefsなどのツールを用い、流入を獲得している全検索クエリをリストアップします。
- AI参照候補クエリの絞り込み:上記クエリのうち、検索順位が「20位以内」に入っているクエリのみを抽出します。(AIが参照する可能性の高いクエリ群)
- 再現性の検証:この「20位以内のクエリ群」と、各記事の「AIモードでの参照回数」を突き合わせます。
- 結果の特定:AIでの参照回数が多い記事群に共通して多く登場するクエリを「再現性の高い派生クエリ」の有力な候補として特定します。
+α 補完的分析(タイトルタグ解析)
検索ボリュームがない派生クエリを補完するため、高い頻度で参照される記事のタイトルタグや見出しテキストを解析し、クエリ群との共通点や、AIが求めている文脈を推定します。
本調査レポートの要点
- AIモードの参照パターンは二種類:メインクエリ経由とサブクエリ経由の2パターンで構成される
- 再現性の高いサブクエリが存在:AIが繰り返し生成するサブクエリを通じて、同一の記事が安定的に参照される傾向
- SEO順位が高い記事ほど参照回数が多い:メイン・サブいずれのクエリでもSEO上位表示がAIモードでの参照につながる
- ロングテールクエリも参照を支える要素に:従来のSEOで軽視されがちだったロングテールクエリがAIモードでは重要化
- AIモードで参照される記事を狙うなら:メインクエリのSEO対策のみではなく、サブクエリを意識したコンテンツ設計が重要
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