高額商材購入における生成AI活用実態調査

LANY LLMO LABでは、直近1年以内に、生成AIを利用して10万円以上の高額商材を購入した人111名を対象に、高額商材購入における生成AI活用実態調査を実施しました。
本記事では調査結果について解説します。
|
調査の背景
ChatGPTやClaudeをはじめとする生成AIの普及により、人々の購買プロセスは大きな転換期を迎えています。従来の公式サイトや比較サイトなど、複数ページを回遊しながら答えを探す情報収集から、AIに相談して意思決定するスタイルへ移行が進んでいます。生成AIは検索に伴う「デルフォイ的コスト」──キーワード設計やリンク精査などの負担──を大幅に削減し、知りたい情報に直接アクセスできるようにします。
この低コスト体験が購買行動そのものを変えつつあるのです。特に高額商材の検討において、生成AIが意思決定プロセスにどのような影響を与えているかは、企業のマーケティング戦略や販売プロセスに直結する重要な論点となりつつあります。AIの回答に自社がどのように紹介されるかは、今後の購買接点や顧客獲得に大きな影響を及ぼす可能性があります。
こうした背景を踏まえ、株式会社LANYは「高額商材購入における生成AI活用実態調査」を実施しました。本調査の目的は、生成AIが高額商材の購入意思決定に与える影響を把握し、企業のマーケティング戦略や消費者行動に新しい視点を提供するとともに、生成AI時代の購買体験最適化に向けたLLMO(Large Language Model Optimization:大規模言語モデル最適化)の必要性を明らかにすることです。
調査概要
- 調査名称:高額商材購入における生成AI活用実態調査
- 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
- 調査期間:2025年8月12日〜同年8月13日
- 有効回答:直近1年以内に、生成AIを利用して10万円以上の高額商材を購入した人111名
高額商材の検討時に最も使われた生成AIは「ChatGPT」(65.8%)
「Q1.高額商材の購入検討時に、使用したことのある生成AIサービスを全て選択してください。(複数回答)」(n=111)と質問したところ、「ChatGPT」が65.8%、「Gemini」が42.3%、「Copilot」が39.6%という回答となりました。
- ChatGPT:65.8%
- Gemini:42.3%
- Copilot:39.6%
- Claude:36.0%
- Perplexity:14.4%
- その他:0.0%
- わからない/答えられない:0.9%
生成AI利用で約8割が「意思決定の質が向上」
「Q2.生成AIを使うことで、高額商材購入の意思決定の質はどう変わりましたか。」(n=111)と質問したところ、「とても良くなった」が21.6%、「やや良くなった」が57.7%という回答となりました。
- とても良くなった:21.6%
- やや良くなった:57.7%
- 変わらない:15.3%
- やや悪くなった:2.7%
- とても悪くなった:0.9%
- わからない/答えられない:1.8%
意思決定の質が向上した理由、最多は「選択肢を客観的に比較できた」(73.9%)
Q2で「とても良くなった」「やや良くなった」と回答した方に、「Q3.生成AIによって意思決定の質が良くなった理由は何ですか。(複数回答)」(n=88)と質問したところ、「複数の選択肢を客観的に比較できたから」が73.9%、「商品の長所と短所の両方を知ることができたから」が59.1%、「広告に影響されない中立的な情報が得られたから」が40.9%という回答となりました。
- 複数の選択肢を客観的に比較できたから:73.9%
- 商品の長所と短所の両方を知ることができたから:59.1%
- 広告に影響されない中立的な情報が得られたから:40.9%
- 特定の商品への誘導がなく公平な情報提供だったから:39.8%
- 幅広い視点からの情報が得られたから:38.6%
- 必要な情報だけを効率的に入手できたから:20.5%
- その他:0.0%
- わからない/答えられない:0.0%
自由回答では「メリット・デメリットの提示」「時間効率の向上」などの声も
Q3で「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q4.Q3で回答した以外に生成AIによって高額商材購入の意思決定の質が良くなった理由があれば教えてください。(自由回答)」(n=88)と質問したところ、「メリットとデメリットを教えてくれるから」や「時間効率の上昇」など44の回答を得ることができました。
<自由回答・一部抜粋>
- メリットとデメリットを教えてくれるから。
- 初めて調べる時に説明がわかりやすい。
- 鋭い指摘。
- マイナス面も比較できた。
- 時間効率の上昇。
- 気づかないことを知ることが出来る。
- すぐ的確な答え。
生成AI活用による影響として「より多くの選択肢を比較できた」を実感した人が62.2%で最多
「Q5.生成AIを使用したことで、高額商材の購入検討にどのような影響がありましたか。(複数回答)」(n=111)と質問したところ、「より多くの選択肢を比較検討できた」が62.2%、「より納得のいく選択ができた」が48.6%、「検討時間が短縮された」が45.9%という回答となりました。
- より多くの選択肢を比較検討できた:62.2%
- より納得のいく選択ができた:48.6%
- 検討時間が短縮された:45.9%
- 購入の判断に自信が持てた:43.2%
- 予算内でより良い商品を見つけられた:26.1%
- その他:0.0%
- 特にない:0.9%
- わからない/答えられない:1.8%
購入検討時に最も信頼された情報源は「生成AI」「公式サイト」が同率1位(22.5%)
「Q6.以下の情報源のうち、高額商材の購入検討時に最も信頼して参考にしているのはどの情報ですか。」(n=111)と質問したところ、「生成AI(ChatGPT等)」が22.5%、「企業の公式サイト」が22.5%、「比較・ランキングサイト」が20.7%という回答となりました。
- 生成AI(ChatGPT等):22.5%
- 企業の公式サイト:22.5%
- 比較・ランキングサイト:20.7%
- 販売員・営業担当者の説明:18.0%
- 口コミ・レビューサイト:11.7%
- 家族・友人のアドバイス:2.7%
- その他:0.0%
- わからない/答えられない:1.8%
8割以上が生成AI活用により「不安や疑問を解消できた」と回答
「Q7.高額商材の購入前に、生成AIを活用することで不安や疑問は解消できましたか。」(n=111)と質問したところ、「完全に解消できた」が17.1%、「ほぼ解消できた」が64.9%という回答となりました。
- 完全に解消できた:17.1%
- ほぼ解消できた:64.9%
- あまり解消できなかった:14.4%
- 全く解消できなかった:0.9%
- わからない/答えられない:2.7%
約9割が生成AIの情報を購入において「信頼している」と回答
「Q8.高額商材の購入において、生成AIの情報をどの程度信頼していますか。」(n=111)と質問したところ、「とても信頼している」が21.6%、「ある程度信頼している」が67.6%という回答となりました。
- とても信頼している:21.6%
- ある程度信頼している:67.6%
- あまり信頼していない:8.1%
- 全く信頼していない:0.9%
- わからない/答えられない:1.8%
次回の高額商材購入時も「生成AIを使いたい」と答えた人は9割近く
「Q9.あなたは、次に高額商材を買うとき、また生成AIを使いたいと思いますか。」(n=111)と質問したところ、「非常にそう思う」が22.5%、「ややそう思う」が65.8%という回答となりました。
- 非常にそう思う:22.5%
- ややそう思う:65.8%
- あまりそう思わない:9.0%
- 全くそう思わない:0.0%
- わからない/答えられない:2.7%
生成AI利用前は、約7割が「複数候補で迷っていた」状態
「Q10.生成AIを使用する前、購入したい高額商材はどの程度イメージできていましたか。」(n=111)と質問したところ、「具体的な商品名・型番まで決まっていた」が16.2%、「いくつかの候補で迷っていた」が66.7%という回答となりました。
- 具体的な商品名・型番まで決まっていた:16.2%
- いくつかの候補で迷っていた:66.7%
- だいたいのイメージはあったが、具体的ではなかった:13.5%
- ほとんどイメージできていなかった:2.7%
- わからない/答えられない:0.9%
生成AIの情報で「当初の候補から別の商品に変更した」人が48.7%
「Q11.生成AIの情報は、あなたの高額商材の購買行動にどのような影響を与えましたか。」(n=111)と質問したところ、「当初の予定通りの商品を購入した」が44.1%、「当初の候補から別の商品に変更した」が48.7%という回答となりました。
- 当初の候補から別の商品に変更した:48.7%
- 当初の予定通りの商品を購入した:44.1%
- 全く新しい商品・ブランドを発見して購入した:3.6%
- わからない/答えられない:3.6%
本調査を通した考察/示唆
本調査は、消費者が失敗を避けたいと強く願う「高額商材」の購入プロセスにおいて、生成AIが単なる情報収集ツールから、意思決定の中核を担う「信頼できる相談相手」へと進化している実態を描き出しています。特に、以下の3つの示唆は注目に値します。
1. AIの「客観性」が購買意思決定の拠り所になっている
本調査で最も衝撃的なのは、信頼できる情報源として「生成AI」が「企業の公式サイト」と並んでトップに立った点です。これは、高額商材の購入において消費者が強く求める「商業的バイアスからの解放」というニーズに、生成AIが応えていることを示唆しているように思います。「複数の選択肢を客観的に比較できた」「広告に影響されない中立的な情報が得られた」という声が示すように、AIは売り手側の意図から切り離された客観的なアドバイザーとして、急速に信頼を獲得しています。「売り込まれたくないが、最適な選択をしたい」という消費者心理に対し、AIが理想的なソリューションを提供し始めているのです。
2. AIによって「比較検討の網羅性」が向上
「より多くの選択肢を比較検討できた」ことで「意思決定の質が向上した」という結果は、生成AIが人間の認知能力を拡張するツールとして機能していることを示しています。通常、人間が比較検討できる情報量には限界があり、無意識のうちに選択肢を絞ってしまいがちです。しかしAIを活用することで、その制約から解放され、従来は見過ごしていたかもしれない選択肢まで含めた、網羅的かつ効率的な比較検討が可能になります。これは単なる「時短」ではなく、検討の範囲と深度を広げることによる「意思決定の質の向上」であり、AIが思考のパートナーとして購買体験そのものをアップグレードしていると言えるでしょう。
3. 購買ファネルにおけるAIの影響力が上昇
約半数の消費者が「当初の候補から別の商品に変更した」という事実は、生成AIが購買行動を決定的に左右する「ゲームチェンジャー」であることを証明しています。これは、消費者が最終候補を絞り込んだ後でも、AIへの「最後の確認」が意思決定を覆す可能性があることを意味します。企業にとっては、一度は選考から漏れたとしても、AI上での客観的な評価が高ければ「敗者復活」のチャンスが生まれる一方、最有力候補であってもAIが提示するデメリットや代替案によって顧客を失うリスクがあるということです。顧客接点の最終段階に「AIとの対話」という新たな関門が生まれた今、企業は顧客ジャーニーのあらゆる場面を想定したLLMO(大規模言語モデル最適化)の視点が不可欠となります。
本調査のまとめ
今回の調査では、生成AIが高額商材の購入プロセスにおいて大きな役割を果たし始めている実態が明らかになりました。利用経験ではChatGPTが最多で、意思決定の質については8割が「良くなった」と回答しています。その理由として「複数の選択肢を客観的に比較できた」「長所と短所を整理できた」といった要素が挙げられ、従来は営業担当者や比較サイトが担ってきた機能を生成AIが代替しつつあることが示されました。
さらに、生成AIの利用によって「不安や疑問が解消できた」と答えた人は8割を超え、情報の信頼度も9割近くに達しました。次回の購入でも「生成AIを使いたい」と回答した人は9割弱にのぼり、消費者の購買行動におけるAIの定着度がうかがえます。特に注目すべきは、生成AIの情報によって約半数が当初の候補から別の商品に切り替えており、AIが実際の購買選択を左右する存在になっている点です。
一方で、生成AIは「公式サイト」「比較サイト」と並ぶ主要な情報源として位置づけられつつあり、単独での依存ではなく、複数チャネルを組み合わせて意思決定が行われていることも明らかになりました。
今回の調査では、生成AIが高額商材の購入意思決定において新たな相談相手として確立されていることが明らかになりました。デジタル化が進む現代において、消費者は従来の情報源だけでなく、AIという新しいパートナーを得て、より効率的で納得度の高い購買体験を実現しています。
企業にとっては、消費者が生成AIを通じて商品情報を収集する行動パターンが一般化する中で、AI検索に最適化されたマーケティング戦略の構築が急務となっており、LLMO(Large Language Model Optimization)対策による新時代の購買体験最適化が求められるでしょう。
本調査に関する連絡先
掲載内容について、個別にご連絡が必要な場合は下記よりお問い合わせください。
広報担当:黒木
メール:suzuka.kurogi@lany.co.jp
問い合わせ先:https://www.lany.co.jp/contact
生成AI検索時代のLLMO戦略ならLANYへご相談ください
現在、ChatGPTやGemini等のAI検索の利用率は、Google等の検索エンジンに対して数%と非常に少ないです。よって、LLMOを行ったとしても短期的に得られるリターンは小さいです。
また、SEOやPR等の、すでに取り組まれている施策の結果が、AIに選ばれるブランドになるために必要になるため、全く新しく何かを始めるという進め方は現時点ではすべての企業に推奨できる方法ではありません。
現時点では「AI検索における自社・競合の正しい現在地を把握すること」と「現在地を把握した上で、既に行われているSEOやPRをLLMOも意識して進め始めること」の2点に主眼をおいて、一歩目を踏み出すことを推奨しています。
そもそもLLMOに取り組む必要があるのか、取り組むとしたらまずは既存のSEOやPR領域においてどのような工夫をしていくべきか、もしくは先行投資として本格的に取り組む場合には、どのような体制でどのような戦略方針で進めていくべきか。
こういった部分にお悩みの方はぜひLANYへご相談ください。
【サービス概要資料】LLMOコンサルティング

LANYのLLMOコンサルティングのサービス概要資料です。LANYのLLMOコンサルティングは、企業がAIにどう見られているかを可視化し、選ばれるブランドづくりを支援する包括的なサービスです。
デジタルマーケティングのお悩み、
まずはお気軽にご相談ください。
サービス詳細は資料でもご確認いただけます。