定量分析

AIモード参照は「メインクエリ1位獲得」よりも「10位以内のクエリ獲得数」が重要 - 213記事の定量分析から見えた参照記事特性

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目次

Google検索に実装された「AIモード」は、従来の検索結果とは異なる「クエリファンアウト(関連する複数のサブクエリによる検索)」という挙動により、参照記事を選定しています。

前回の調査では、高頻度参照記事の約50%がメインクエリでは検索順位圏外であり、AIが生成する未知のサブクエリ経由で参照されている実態が浮き彫りとなりました。

「AIはどの記事を、なぜ選ぶのか?」──このブラックボックスを解明するため、今回は記事側が持つ「順位構造(=どの順位帯に、いくつのクエリを持っているか)」に着目。

213記事のクエリデータを詳細に分析した結果、AIモード攻略の鍵は、特定のメインクエリでの1位獲得ではなく、多角的なサブクエリにおいて10位以内を広く抑える「TOP10の占有面」にあることが判明したため、本記事で解説します。

調査概要:AIモードにおける検索順位構造と参照頻度の相関調査

まず、前回の調査では下記の結果が判明しています。

  • AIモードの参照パターンは二種類
    • メインクエリ経由とサブクエリ経由の2パターンで構成される
  • AIモードで高頻度に参照される記事の約50%は、メインクエリではSEO圏外だった
    • これらの記事は、AIが毎回似た形で生成する「再現性の高いサブクエリ」経由で参照されている可能性が高いことが判明した
  • 一方で、AIがどのサブクエリを使っているのかは直接観測できず、ブラックボックスのままという課題が残った

▲AIモードでの参照回数とメインクエリのSEO順位の関係▲AIモードでの参照回数とメインクエリのSEO順位の関係

本調査では、このブラックボックス化されたサブクエリの正体を解明するため、参照された記事が「どの検索順位帯に、どれくらいの数のキーワードで表示されているのか」という検索順位の分布構造に注目しました。

記事が持つ検索順位の広がりを数値で分析することで、AIモードが行う関連クエリでの多角的な検索(クエリファンアウト)に、安定してヒットし続ける記事の共通点を整理し、AI時代における新しいコンテンツ評価の指標とSEO戦略のあり方を明らかにすることを目的としています。

調査概要

  • 調査対象:
    1. 対象カテゴリ: 美容・コスメ領域(シャンプー、化粧水、ヘアアイロン等計5ジャンル)
    2. 検証データ: 参照された213記事(高頻度・中頻度・低頻度の3グループに分類)
  • 本調査におけるキーワードの定義:
    1. メインクエリ: 質問から最も派生が少ない主要クエリ(例:「ドラッグストア シャンプー おすすめ」) 
    2. サブクエリ: AIがファンアウトによって自動生成した関連クエリ

調査フロー

1.対象記事データセット作成方法

AIモードがどのような記事を選びやすいか傾向を数値化するため、以下の手順でデータを収集。

  1. 同じ質問を200回繰り返す:AIモードの回答にはゆらぎがあるため、同じ質問を200回繰り返し入力。
  2. 参照された記事をすべて集める:200回の回答で使用されたすべての参照記事をリストアップ。
  3. 参照回数を数える:それぞれの記事が「200回中、何回選ばれたか」を集計。
  4. 各記事に対し、以下の特徴量を作成(Ahrefsを利用)
    1. 獲得クエリ総数: その記事がランクインしている全クエリ数
    2. 1~5位のクエリ数: 検索順位が1~5位のクエリ数
    3. 6~10位のクエリ数: 検索順位が6~10位のクエリ数
    4. 11~20位のクエリ数: 検索順位が11~20位のクエリ数
    5. 21~50位のクエリ数: 検索順位が21~50位のクエリ数
    6. 51位以下のクエリ数: 検索順位が51位以下のクエリ数
    7. ロングテールクエリの割合: 獲得クエリのうち、月間検索ボリュームが1,000以下のクエリが占める割合

2.分析対象の検索クエリ

美容・コスメ領域の以下5つの質問について、上記のデータ作成を実施。

  • ドラッグストアで売ってるおすすめのシャンプー
  • 敏感肌でも使えるおすすめの化粧水
  • 髪が傷まないおすすめのヘアアイロン
  • 肌がトーンアップするおすすめの下地
  • お風呂上がりに使うおすすめのボディクリーム

3.分析対象グループの定義

分析対象の記事を以下の3つのグループに分類。

グループ名定義記事数
高頻度参照グループ参照回数 100回以上44記事
中頻度参照グループ参照回数 10~99回93記事
低頻度参照グループ参照回数 9回以下76記事

4.仮説検証を実施

AIモードの参照の要因を特定するため、以下の3段階のプロセスで仮説検証を実施。

  1. Step 1:ロングテールクエリ比率の検証
  2. Step 2:獲得クエリ総量の検証
  3. Step 3:順位構造の検証

なお本調査は、参照頻度と順位構造の相関を確認するものであり、因果関係を直接証明するものではありません。

分析結果①: ロングテール比率は参照の差別化要因ではない

まず、ロングテールクエリの比率はAIモード参照の差別化要因ではありませんでした。

高頻度・低頻度いずれの記事も、獲得クエリの96〜99%がロングテールであり、明確な差は見られませんでした。

仮説

AIモードは「クエリファンアウト」によって、ユーザーの質問を複数の関連するサブクエリに分解して検索を行います。そのため、記事が獲得しているクエリの中で、ロングテールクエリ(月間検索数1,000以下)の割合が高いほど、AIが生成するサブクエリと一致しやすくなり、参照されやすくなるのではないかと仮定しました。

論拠

ビッグワード(例:「化粧水」)よりも、「化粧水 敏感肌 ヒリヒリしない」のような具体的でニッチな複合クエリの方が、AIモードが求める情報に近い可能性があります。このことから、記事テーマを絞り、ロングテールクエリの比率を高めることが参照頻度向上につながると考えました。

検証指標

各記事が獲得している全クエリのうち、月間検索ボリュームが1,000以下のロングテールクエリが占める割合を指標として比較しました。

結果

有意差なし(仮説棄却)。
高頻度・中頻度・低頻度のすべてのグループにおいて、獲得クエリの96%〜99%がロングテールクエリであり、参照頻度による明確な差は確認できませんでした。

ロングテールクエリ比率の比較

考察と課題

  1. 「比率」は差別化要因ではない 
    Web記事が獲得しているクエリの多くがロングテールクエリであることは、一般的な特性に過ぎません。そのため、ロングテールクエリの比率そのものは、AIモードに参照されるかどうかを左右する決定的な差別化要因ではなかったと考えられます。
  2. ファンアウトクエリの多様性
    「クエリファンアウト=ロングテール(ニッチなクエリ)」という前提自体が、やや限定的だった可能性があります。ファンアウトによって生成されるサブクエリは確かに具体的ではあるものの、必ずしも検索ボリュームが小さいとは限らず、ミドルレンジの具体的なクエリも含まれます。そのため、単にロングテールクエリの比率を高めるだけでは、多様なファンアウトクエリすべてに対応することは難しいといえます。
  3. 「割合」から「量」への視点転換 
    以上のことから、勝敗を分けている変数は「クエリの種別や比率」ではなく、どのようなクエリが生成されても対応できる「獲得クエリの絶対数」にある可能性が高いと考えられます。この仮説を検証するため、次のステップでは獲得クエリの総量に着目した分析を行います。

分析結果②:勝敗を分けるのは「獲得クエリ総数」の差

AIモードにおける参照頻度は、ロングテールクエリ比率ではなく、記事が獲得しているクエリの総数と強く関係していることが分かりました。高頻度参照される記事は、他の記事と比べて獲得クエリ数が明確に多い傾向にあります。

仮説

Step1の結果を踏まえると、ファンアウトによって生成されるサブクエリは多様であり、ロングテールクエリに限らないと考えられます。そのため、特定のクエリ比率を高めるよりも、記事が獲得しているクエリの総量が多いほど、AIモードで参照される確率が高まるのではないかと仮定しました。

論拠

クエリファンアウトでは、一つの質問からニッチなものから一般的なものまで、さまざまなサブクエリが生成されます。どのクエリが使用されるかを事前に予測することは難しいため、特定のクエリに絞るよりも、幅広いクエリで検索結果に表示される状態を作る方が有利になると考えられます。

検証指標

各記事が検索結果に表示されている獲得クエリの総数を指標として比較しました。なお、この指標では検索順位は考慮していません。

結果

有意差あり(仮説採択)。

高頻度参照グループは、中頻度・低頻度グループと比べて、約1.6倍の獲得クエリ数を記録しており、明確な差が確認されました。

獲得クエリ総数の比較

考察と課題 

本結果から、獲得クエリ数の多さと参照回数の多さには関係があることが分かりました。一方で、この「獲得クエリ数」が、順位に関係なくインデックスされている状態を指すのか、検索上位に表示されている状態を指すのかは区別する必要があります。

もし前者であれば、順位を問わずクエリ数を増やすことが重要になりますが、後者であれば検索上位に表示されるクエリ数を増やすことが重要になります。

この違いを明らかにするため、次のステップでは順位帯ごとのクエリ内訳を検証します。

分析結果③:参照の分岐点は「6〜10位(1ページ目下位)」の占有数にある

AIモードで参照されるかどうかを分けていたのは、獲得クエリの総数ではなく「検索順位10位以内に入っているクエリの数」であることが判明しました。

特に、6〜10位のクエリをどれだけ多く持っているかが、高頻度参照の分岐点となっています。

仮説

参照されやすさを決める決定的な要因は、単にインデックスされているクエリの総数ではなく、「検索上位(TOP10など)にランクインしているクエリの数」が多いことにあるのではないかと仮定しました。

検証指標

  • 順位帯ごとのクエリ獲得数
    • 1位〜5位: 検索最上位
    • 6位〜10位: 検索1ページ目下位
    • 11位以下: 検索2ページ目以降

結果

獲得クエリ数の差は「TOP10」に起因する (仮説採択)

Step 2で確認された「獲得クエリ総数」の差分を順位帯ごとに分解したところ、11位以下の領域ではグループ間のクエリ数に差分はありませんでした。

一方で、10位以内の領域では明確な差が確認できました。これにより、「総数ではなく上位クエリ数が要因である」という仮説は支持されました。

  1. 1位〜5位:低頻度グループとの違い
    低頻度グループは平均7.0個であるのに対し、中頻度・高頻度グループはいずれも15〜16個と、大きな差がありました。ただし、中頻度と高頻度の間には大きな差は見られず、この順位帯は「参照されない記事」をふるい落とす要因に近いと考えられます。
  2. 6位〜10位:高頻度参照を分ける決定的な差
    6位〜10位では、高頻度グループが平均17.0個と、他グループ(11.0〜12.5個)を大きく上回っていました。高頻度グループは、1位〜5位と同程度のクエリ数をこの順位帯でも維持しており、これが安定して参照される最大の要因と考えられます。
  3. 11位以下:参照頻度への影響は見られない
    11位以下のすべての順位帯において、グループ間の差はほとんどなく、値の差も0〜1個程度でした。このことから、検索順位が11位以下のクエリ数は、AIモードの参照頻度にはほぼ影響しないと考えられます。

比較表

補足分析:差は偶然ではないか?有意性の検証

ここまでの分析では、高頻度参照記事ほど「TOP10内の獲得クエリ数」が多い傾向が見られました。
 この差が偶然ではないことを確認するため、追加で統計的な検定を実施しました。

分析手法と判定基準

  • 比較対象:高頻度参照グループ vs 低頻度参照グループ(※中頻度は傾向が重複するため除外)
  • 検定手法:マン・ホイットニーのU検定(非正規分布・外れ値を想定)
  • 判定基準:有意水準10%(p < 0.10)を有意差の基準としました(傾向を広く捉える目的)

結果(p値)

指標p値判定
獲得クエリ数0.064有意差あり
1~5位数0.107有意差なし(傾向あり)
6~10位数0.091有意差あり
11~20位数0.181有意差なし
21~50位数0.410有意差なし
51位以下数0.966有意差なし

この結果から、参照頻度の差は「順位が低いクエリ数」では説明できず、特に6〜10位を含むTOP10内のクエリ数が差を生んでいることが統計的にも支持されました。

補足分析:TOP10と11位以下のどちらが効いているか?

同じ検定手法で、順位帯を「TOP10(1〜10位)」と「11位以下」にまとめて比較しました。

指標p値判定
1~10位0.098有意差あり
11位以下0.154有意差なし

この結果から、AIモードの参照頻度に影響しているのは、検索1ページ目(TOP10)に入っているクエリの量であり、11位以下の順位帯は参照頻度にほとんど寄与していないことが分かります。

比較表

結論

本調査の結果、AIモードでの参照頻度を最大化する要因は、「メイン・サブを問わず、TOP10(検索1ページ目)に入っているクエリの絶対数」であると結論付けられました。

AIはクエリファンアウトによって検索を細分化しますが、記事の「質」の判断は依然として検索エンジンの順位評価に依存しています。高頻度参照される記事は、特定のワードでの1位に固執せず、関連する多様なクエリで「1ページ目に残り続ける」という、面のSEOを実現していることが最大の勝因です。

また、「TOP10を面で抑える」ためには、以下いずれかの戦略が選択肢として考えられます。

  • 1記事で関連キーワードを広く10位以内に入れる
  • 複数記事で関連領域のキーワードを分担し、それぞれで10位以内を積み上げる

結果として「参照されうる多角的なクエリでTOP10に残る面」を作ることが重要です、。

ただし、本調査は美容・コスメ領域の「おすすめ」系クエリを対象としているため、他カテゴリでも同様の傾向が成立するかは今後の検証課題です。

示唆と考察

なぜ「検索上位(TOP10以内)に入っているクエリの絶対数」が重要なのかについては、以下のメカニズム(前回調査)と勝因(本調査)によって説明できます。

1. メカニズム:「質」の評価は検索エンジンに依存する(前回調査より)

AIモードは、記事の質をゼロから独自に判断しているわけではなく、SEOで高く評価されている記事(=検索順位TOP10に入っている記事)を、信頼できる情報源として採用していると考えられます。

前月の調査では、「メインクエリ」において検索順位が高い記事ほど、AIモードに参照されやすい傾向が確認されました。

また、Googleの公式見解でも「AIモードは従来のSEO評価に準拠する」と示されていることから、AIモードが生成するサブクエリにおいても、検索順位の高さが参照可否を左右する重要な要因になると仮定できます。

2. 勝因:「広範囲なTOP10入り」によるヒット率の最大化

AIモードは「クエリファンアウト」によって、ユーザーの質問を多様なサブクエリに分解して検索を行います。この際、生成されるサブクエリには毎回一定のブレが生じます。

低頻度参照の記事は、特定のメインクエリでは上位に表示されているものの、ファンアウトによって検索の角度が変わると順位を落としやすく、結果として参照されないケースが発生します。

一方、高頻度参照の記事は、1位〜10位の範囲で多くのクエリを獲得しており、どのような角度でファンアウトされても、いずれかのクエリにヒットしやすい構造を持っています。

そのため、高頻度で参照される状態を実現するには、AIモード専用の対策を行うのではなく、メインクエリ・サブクエリを問わず、多角的なクエリで検索上位(TOP10以内)を維持し続けることが重要だといえます。

実践的なアクションプラン

  1. 「一点突破」から「10位以内の量産」へ: 特定クエリでの1位に固執するよりも、関連語や周辺トピックを含めて「10個のクエリでTOP10入り」を目指すコンテンツ設計にシフトすべきです。
  2. 既存記事の「11位〜20位」クエリの底上げ: 現在インデックスされているものの、1ページ目に届いていないクエリを特定し、リライトによって10位以内に押し上げることが、AI参照頻度を高める最短ルートとなります。
  3. 次なる調査ステップ: 美容カテゴリ以外のドメイン(B2Bや金融等)でも同様の傾向が見られるか検証するとともに、AIが好む「言い換え(ベクトル検索)」に強い記事構成のパターンを解析します。

本調査レポートの要点

  • 主要因: 参照頻度は「TOP10以内のクエリ獲得数」に正比例する。
  • 6-10位の価値: 1〜5位だけでなく、6〜10位にどれだけ多くのサブクエリを残せるかが高頻度参照の分岐点。
  • 圏外の理由: メインクエリで圏外でも、厚みのある順位構造を持つ記事はサブクエリ経由で安定して選ばれる。
  • SEOの再定義: AI時代においてもSEOの基本(順位向上)は有効だが、ターゲットは「面(クエリの広がり)」へと拡張されている。
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担当メンバー 津濱 ひかり

東京科学大学(旧:東京工業大学)の大学院時代にSEOに興味を持ち、株式会社LANYでインターンとしてデータ分析に従事。並行してデータサイエンスを学び、現在は事業会社でデータサイエンティストとして、営業業務の改善を目的とした社内ツールの企画・改善を担当。大規模言語モデル(LLM)を活用した機能開発にも取り組んでいる。

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監修者 竹内 渓太

株式会社リクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やB2Bマーケティングなど多種多様な業務を経験。その後、株式会社LANYを創業し、Webメディア・サービスサイト・データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでいる。

X・YouTubeチャンネルで「SEOおたく」としても情報発信中。著書『強いSEO』『強いBtoBマーケティング』『強いLLMO』(エムディエヌコーポレーション)出版。

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