生成AI時代におけるBtoB商材の購買行動調査

LANY LLMO LABでは、サービス・ツールの導入・検討の意思決定に携わっており、過去1年以内に生成AIに相談してサービス・製品を契約・購入した経験があるBtoB企業の方110名を対象に、生成AI時代における購買行動調査を実施しました。
本記事では調査結果について解説します。
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調査の背景
ChatGPTの登場以降、生成AIのビジネス活用は急速に広がり、企業の意思決定プロセスにも変化が生まれています。特にBtoBサービスやツールの選定においては、生成AIが従来の検索や人づてに並ぶ「新たな情報源」として注目されています。
こうした背景を踏まえ、本調査では 「過去1年以内に生成AIに相談し、サービス・製品を契約・購入した経験のあるBtoB企業の意思決定者・担当者110名」 を対象に、生成AIが購買行動にどのような影響を及ぼしているかを明らかにしました。
本調査の目的は、生成AIを活用する層の行動特性を把握し、今後のBtoBマーケティングに求められる新たなアプローチを提示することにあります。
調査概要
- 調査名称:生成AI時代におけるBtoBにおける購買行動調査
- 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
- 調査期間:2025年8月5日〜同年8月6日
- 有効回答:サービス・ツールの導入・検討の意思決定に携わっており、過去1年以内に生成AIに相談してサービス・製品を契約・購入した経験があるBtoB企業の方110名
比較検討において、「60〜80%ほどの頻度」で生成AIを活用している人が34.5%で最多
「Q1.新しいサービスやツールを検討する際、生成AIをどの程度活用していますか。」(n=110)と質問したところ、「80%以上」が10.9%、「60〜80%程度」が34.5%という回答となりました。
- 80%以上:10.9%
- 60〜80%程度:34.5%
- 40〜60%程度:31.8%
- 20〜40%程度:17.3%
- 20%未満:5.5%
- わからない/答えられない:0.0%
比較検討における生成AIへの相談タイミングは、「情報収集・市場調査の段階」が60.9%
「Q2.サービスの導入・検討のどのタイミングで主に生成AIへ相談していますか。(複数回答)」(n=110)と質問したところ、「情報収集・市場調査の段階」が60.9%、「サービス候補を比較検討する段階」が55.5%、「詳細仕様・要件確認の段階」が47.3%という回答となりました。
- 情報収集・市場調査の段階:60.9%
- サービス候補を比較検討する段階:55.5%
- 詳細仕様・要件確認の段階:47.3%
- 課題認識・ニーズ整理の段階:37.3%
- 稟議書作成・上司説得の段階:21.8%
- 契約前の最終確認の段階:11.8%
- 導入後の活用方法検討の段階:4.5%
- その他:0.0%
- わからない/答えられない:1.8%
参考になった契約サービスの費用規模、最多は「30〜100万円未満」
「Q3.生成AIに相談して契約したサービスの中で、最も参考になった案件の費用規模を教えてください。」(n=110)と質問したところ、「30〜100万円未満」が30.9%、「100〜300万円未満」が22.7%という回答となりました。
- 30万円未満:13.6%
- 30〜100万円未満:30.9%
- 100〜300万円未満:22.7%
- 300〜1000万円未満:15.5%
- 1000〜3000万円未満:6.4%
- 3000万円以上:4.5%
- わからない/答えられない:6.4%
生成AIで新たにサービスを知り、それを選択した人が46.4%も
「Q4.サービス検討時、生成AIの回答はあなたの意思決定にどのような影響を与えましたか。最もあてはまるものを選択してください。」(n=110)と質問したところ、「元々検討していたサービスの導入を後押しした」が20.9%、「検討していなかった新しいサービスを知り、それを選んだ」が46.4%という回答となりました。
- 検討していなかった新しいサービスを知り、それを選んだ:46.4%
- 複数の選択肢を比較検討する材料になった:24.5%
- 元々検討していたサービスの導入を後押しした:20.9%
- 検討していたサービスのデメリットを知り、再検討した:2.7%
- その他:0.0%
- わからない/答えられない:5.5%
約9割が「生成AIの回答が契約判断に影響した」と回答
「Q5.生成AIの回答は契約締結の判断にどの程度影響しましたか。」(n=110)と質問したところ、「かなり影響があった」が20.9%、「ある程度影響があった」が66.4%という回答となりました。
- かなり影響があった:20.9%
- ある程度影響があった:66.4%
- あまり影響がなかった:9.1%
- 全く影響がなかった:1.8%
- わからない/答えられない:1.8%
生成AI相談のメリット1位は「導入コストやROIの試算のサポート」
「Q6.新しいサービスやツールの導入・検討を生成AIに相談する最大のメリットはなんだと思いますか。(複数回答)」(n=110)と質問したところ、「導入コストやROIの試算を手伝ってくれる」が52.7%、「社内説明用の資料作成をサポートしてくれる」が48.2%、「瞬時に複数サービスの比較表を作成してくれる」が40.0%という回答となりました。
- 導入コストやROIの試算を手伝ってくれる:52.7%
- 社内説明用の資料作成をサポートしてくれる:48.2%
- 瞬時に複数サービスの比較表を作成してくれる:40.0%
- 導入プロセスの進め方をステップごとに案内してくれる:38.2%
- 見落としがちなリスクや注意点を指摘してくれる:36.4%
- 自社の業界・規模に適したサービスを提案してくれる:18.2%
- 契約条件や利用規約の重要ポイントを解説してくれる:10.0%
- その他:0.9%
- 特にない:1.8%
- わからない/答えられない:1.8%
検討時に確認する情報源は「比較メディア」「口コミ」が上位
「Q7.生成AI以外に、サービス検討時に確認している情報源があれば教えてください。最もあてはまるものを選択してください。」(n=110)と質問したところ、「第三者レビューサイト・比較メディア」が29.1%、「実際の利用者の声・口コミ」が21.8%という回答となりました。
- 第三者レビューサイト・比較メディア:29.1%
- 実際の利用者の声・口コミ:21.8%
- 業界レポート・市場調査資料:20.0%
- 公式情報(サイト・カタログ・価格表):18.2%
- 競合他社の導入状況調査:6.4%
- YouTube等の解説動画:1.8%
- その他:0.0%
- 特にない:0.9%
- わからない/答えられない:1.8%
生成AIの活用で「リスクの発見や要件明確化」に役立った人が多数
「Q8.サービス導入検討において、生成AIに相談して特に良かった点は何ですか。(複数回答)」(n=110)と質問したところ、「当初検討していたサービスの潜在的な課題・リスクに気づけた」が45.5%、「自社に本当に必要な機能・要件が明確になった」が39.1%、「予算規模や費用対効果の考え方が大きく変わった」が33.6%という回答となりました。
- 当初検討していたサービスの潜在的な課題・リスクに気づけた:45.5%
- 自社に本当に必要な機能・要件が明確になった:39.1%
- 予算規模や費用対効果の考え方が大きく変わった:33.6%
- 自分では見つけられなかった新しいサービス・ベンダーを発見できた:31.8%
- 導入タイミングを再検討する必要があることが分かった:30.0%
- 比較検討の観点や評価軸が整理できた:28.2%
- 社内説得に必要な論点や根拠が明確になった:11.8%
- 導入後の運用課題や注意点を事前に把握できた:7.3%
- その他:0.0%
- 特に良かった点はない:0.9%
- わからない/答えられない:1.8%
生成AI活用でサービス選定時間の短縮を感じた人は73.6%
「Q9.生成AIを活用した場合のサービス選定時間は、従来の方法と比べてどうですか。」(n=110)と質問したところ、「大幅に短い」が14.5%、「やや短い」が59.1%という回答となりました。
- 大幅に短い:14.5%
- やや短い:59.1%
- 変わらない:15.5%
- やや長い:8.2%
- 大幅に長い:0.9%
- わからない/答えられない:1.8%
生成AIの助言を参考に契約したサービスについて、92.8%が「満足」
「Q10.生成AIの助言を参考に契約したサービスについて、そのサービスに満足していますか。」(n=110)と質問したところ、「満足」が28.2%、「やや満足」が64.6%という回答となりました。
- 満足:28.2%
- やや満足:64.6%
- やや不満:4.5%
- 不満:0.9%
- わからない/答えられない:1.8%
最も信頼する情報源は「公式情報」「比較サイト」「生成AI」
「Q11.サービス選定時に、最も信頼している情報源を教えてください。」(n=110)と質問したところ、「ベンダーの公式情報・提案」が26.4%、「生成AI(ChatGPT等)」が20.0%という回答となりました。
- ベンダーの公式情報・提案:26.4%
- 比較・評価サイト:22.7%
- 生成AI(ChatGPT等):20.0%
- ベンダーの営業担当者:16.4%
- 導入企業の口コミ・事例:8.2%
- 社内の情報システム部門:3.6%
- その他:0.0%
- 特にない:0.0%
- わからない/答えられない:2.7%
93.7%が今後もサービス検討時に生成AIを使いたいと回答
「Q12.今後もサービス導入検討で生成AIを使いたいと思いますか。」(n=110)と質問したところ、「積極的に使いたい」が31.8%、「どちらかというと使いたい」が61.9%という回答となりました。
- 積極的に使いたい:31.8%
- どちらかというと使いたい:61.9%
- どちらかというと使いたくない:3.6%
- 全く使いたくない:0.9%
- わからない/答えられない:1.8%
本調査を通した考察/示唆
本調査は、BtoBにおける購買行動において、生成AIが単なる情報検索ツールから、意思決定プロセスに深く関与する「思考パートナー」へと急速に進化している実態を示しています。特に注目すべきは、以下の3点です。
1. 発見可能性の拡張:SEOを土台とした「対話による発見」の重要性
本調査で約半数が「検討していなかった新しいサービスを生成AI経由で知り、選択した」という結果は、顧客との新たな接点が生まれていることを示唆します。
これまでBtoBマーケティングの根幹を担ってきたSEO(検索エンジン最適化)の重要性は、今後も揺らぐことはありません。 なぜなら、生成AIの回答品質は、参照元となるWeb上の情報の質と量に大きく依存しており、検索エンジンに正しく評価されるためのSEOは、まさにLLMOの土台となるからです。
その上で本調査が示すのは、従来の「検索」行動に加え、AIとの「対話」の中でいかにして自社を認知・推奨してもらうか、というLLMO(大規模言語モデル最適化)の視点が、新たな競争軸として加わったという事実です。企業は、これまでのSEOの取り組みを継続・強化しつつ、AIに「最適な答え」として引用・推薦されるための情報戦略を組み込むことが求められます。
2. 信頼される「第三者アドバイザー」としてのAIの台頭
サービス検討時に「比較メディア」や「口コミ」といった第三者の視点が重視される傾向は依然として強いですが、本調査では生成AIがその役割を担う新たな存在として信頼を獲得しつつあることが示されました。
生成AIは、インターネット上の膨大な情報(公式サイト、レビュー、ニュース記事など)を統合し、ユーザーの個別の状況に合わせて客観的かつ合理的な比較・推奨を行います。この特性が、まさにユーザーが第三者に求める「バイアスのない客観的なアドバイス」というニーズと合致していると言えるでしょう。企業にとっては、公式サイトの情報発信だけでなく、比較サイトやレビューサイトでの評判も含めた総合的な情報エコシステムを構築し、AIにポジティブに参照されるための情報戦略が求められます。
3. 購買プロセスの効率化がもたらす「営業担当者」の役割の変化
7割以上の回答者が「サービス選定時間が短縮された」と感じている点は、生成AIが購買担当者の情報収集や比較検討の負荷を劇的に軽減している証左です。これにより、担当者は煩雑な事前調査から解放され、より本質的な課題の整理や、最終候補との深い対話に時間を割けるようになります。
これは、営業担当者の役割が大きく変化することを意味します。AIが提示できる80点レベルの合理的で網羅的な情報提供は、もはや付加価値になりません。これからの営業担当者には、AIの回答を踏まえた上で、顧客の個別事情に深く踏み込んだコンサルティングや、AIでは提示できない潜在リスクの指摘、導入後の成功イメージを具体的に描かせる提案力など、人間ならではの高度な価値提供が強く求められるようになるでしょう。
BtoBにおけるAI検索への対応は、今後より一層多くの企業が取り組んでいく領域になりそうです。
本調査のまとめ
今回の調査では、生成AIが 「新しいサービスとの出会い」や「購買プロセスの生産性向上」 に寄与していることが明らかになりました。従来は営業担当者や比較サイトが担っていた役割の一部を、生成AIが代替し始めていると言えます。
特に注目すべきは、約半数が「検討していなかった新しいサービスを生成AIを通じて知り、選択した」と回答した点です。これは、企業の購買活動においてAIが「意思決定の入口」となり得ることを示しています。また、選定プロセスにおいてはROI試算やリスク発見といった実務的な支援が評価されており、単なる検索の代替ではなく、意思決定の質を高める役割を果たしていることが分かります。
一方で、生成AIの回答だけに依存するのではなく、比較メディアや口コミ、公式情報といった複数の情報源を組み合わせて検討している傾向も見られました。つまり、今後のBtoBマーケティングに求められるのは「AIに正しく紹介される状態」をつくるだけでなく、第三者レビューや公式情報との一貫性を持った情報設計です。
生成AIはもはや“補助的なツール”にとどまらず、購買プロセス全体を支える存在となりつつあります。BtoB企業にとっては、SEOやPRといった既存の施策をLLMO(大規模言語モデル最適化)の視点で再構築し、AIに選ばれるブランドになることが急務と言えるでしょう。
本調査に関する連絡先
掲載内容について、個別にご連絡が必要な場合は下記よりお問い合わせください。
広報担当:黒木
メール:suzuka.kurogi@lany.co.jp
問い合わせ先:https://www.lany.co.jp/contact
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現在、ChatGPTやGemini等のAI検索の利用率は、Google等の検索エンジンに対して数%と非常に少ないです。よって、LLMOを行ったとしても短期的に得られるリターンは小さいです。
また、SEOやPR等の、すでに取り組まれている施策の結果が、AIに選ばれるブランドになるために必要になるため、全く新しく何かを始めるという進め方は現時点ではすべての企業に推奨できる方法ではありません。
現時点では「AI検索における自社・競合の正しい現在地を把握すること」と「現在地を把握した上で、既に行われているSEOやPRをLLMOも意識して進め始めること」の2点に主眼をおいて、一歩目を踏み出すことを推奨しています。
そもそもLLMOに取り組む必要があるのか、取り組むとしたらまずは既存のSEOやPR領域においてどのような工夫をしていくべきか、もしくは先行投資として本格的に取り組む場合には、どのような体制でどのような戦略方針で進めていくべきか。
こういった部分にお悩みの方はぜひLANYへご相談ください。
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