AI時代、オウンドメディアの価値は「流入獲得」だけではない──AIの参照時推奨率が最大55pt改善した実例
生成AIの普及によって、企業のオウンドメディアに求められる役割が変わり始めています。
これまでオウンドメディアは、Google検索で上位表示し、ユーザーを自社サイトへ呼び込むための「集客チャネル」として語られることが中心でした。
しかし、ChatGPTやGeminiなどの生成AIが情報探索や比較検討に利用されるようになると、オウンドメディアにはもう一つ重要な役割が生まれます。
それが、AIが自社を評価・推奨するための情報源になることです。
生成AIは、ユーザーから質問を受けると、必要に応じてWeb上のさまざまな情報を取得し、それらをもとに回答を生成します。
そのため、自社のオウンドメディアがAIから参照されている場合、記事に書かれている内容によって、
- 自社サービスが候補として挙がるのか
- どのような特徴を持つサービスとして説明されるのか
- どのようなユーザーに推奨されるのか
まで変わる可能性があります。
LANYでは今回、AIの回答と参照元を継続的にモニタリングし、「自社記事はAIから参照されているにもかかわらず、自社サービスの推奨につながっていない記事」を特定しました。
その記事の一部を改善することで、AI上の推奨結果がどのように変化するのかを検証しています。
結果として、複数の記事において、AIからの参照量を大きく変えることなく、参照された際に自社が推奨される割合を大幅に改善する事例が確認されました。
本記事では、実際の検証結果をもとに、AI時代におけるオウンドメディアの新しい価値について考察します。
※クライアント保護の観点から、企業名・サービス名・記事テーマは匿名化し、一部の数値は丸めて記載しています。
AIから「参照されること」と「推奨されること」は別
LLMOを考えるうえで重要なのは、「AIから参照されること」と「AIに推奨されること」は別の問題であるという点です。
AIに参照されるとは、自社記事が情報源として取得・利用されることです。
一方で、AIに推奨されるとは、その記事をもとに自社サービスがおすすめされることを意味します。
この二つは似ているようで、打ち手が異なります。
たとえば、
「自社記事はAIから参照されているが、自社サービスはあまり推奨されていない」
という状態が起こります。
この場合の課題は、「もっと見つけてもらうこと」ではなく、AIが推奨理由として使える材料を記事内で十分に受け取れていないことにあります。

LANYでは、この2つを分けてモニタリングしています。
参照率は、AIの回答生成時に自社ドメインが情報源として参照される割合。
参照時推奨率は、自社ドメインが参照された回答のうち、実際に自社サービスが推奨された割合です。
ChatGPTは、ページ全体をそのまま回答に使っているわけではない
では、なぜ記事の一部分を改修するだけで、AI上の推奨結果が変わるのでしょうか。
そのヒントになるのが、生成AIのWeb検索・情報取得の仕組みです。
2025年に外部のAI検索分析企業がChatGPTのWeb検索時の通信データを観測・分析した結果として、ChatGPTの検索・取得プロセスの一部が報告されています。
これはOpenAIが公式に公開している仕様ではなく、あくまで特定時点における外部からの観測である点には注意が必要ですが、LLMOを考えるうえで興味深い示唆があります。
その観測によると、ChatGPTは一つの質問に対して一度だけ検索するのではなく、複数の検索クエリへ展開し、複数の検索先から情報を取得しながら回答を組み立てているとみられます。
ある一つの質問では、
- 複数回の検索ラウンド
- 複数の検索クエリへの展開
- 大量の検索結果・URLの取得
- その一部だけを最終的な回答で引用
といった挙動が観測されています。
さらに、取得したページについても、HTMLをそのまま使うのではなく、テキスト化したうえで複数のチャンクに分割し、それぞれを評価している様子が確認されています。
つまり、AIから見れば、ページ全体がそのまま一つの情報として扱われているとは限らないということです。

こうした観測は、LANYで実際に確認している現象とも整合的です。
つまりLLMOにおいて重要なのは、単に「良い記事を書くこと」だけではなく、AIが取得した一部分だけを見ても、自社について正しく理解・評価できる状態を作ることだと考えられます。
LANYでは「AIに使わせたいパッセージ」を設計する
この考え方を踏まえ、LANYでは記事内にAIに使わせたいパッセージを意図的に設計しています。
基本となるのが、
サービス名 × KBF × RTB
です。
KBF(Key Buying Factor)は、ユーザーがサービスを比較・検討する際に重視するポイントです。
たとえば、
- 料金
- 利便性
- サポート
- 信頼性
- 対応範囲
などが該当します。
RTB(Reason to Believe)は、「なぜ、そのKBFにおいてそのサービスを評価できるのか」という根拠です。
LANYでは、AIに自社を適切に推奨してもらうための基本形として、サービス名・KBF・RTBを一つのまとまりのあるパッセージとして記述することを重視しています。
たとえば、
Aサービスは料金が安いです。
と書くだけではなく、
Aサービスは、〇〇という仕組みによって月額コストを抑えられるため、料金を重視するユーザーに向いています。
まで書くイメージです。
後者では、
- サービス名:Aサービス
- KBF:料金
- RTB:〇〇という仕組み
- 推奨対象:料金を重視するユーザー
が一つの意味のまとまりとして存在しています。
重要なのは、単にサービス名や強みを追記することではありません。
ページの一部だけが取得・評価された場合でも、その一部分だけで「このサービスは誰に、なぜ推奨できるのか」が伝わる状態を作ることです。
SEOとLLMOは分けて考えない
もちろん、AIに使わせたいパッセージを追加するだけで十分なわけではありません。
そもそもAIに記事を見つけてもらえなければ、その内容が使われることはないからです。
LANYでは、LLMOにおけるオウンドメディア施策を、
① 検索で見つけてもらう
② 記事から推奨理由を使ってもらう
という二段階で捉えています。
たとえば、ユーザーが「おすすめの〇〇を教えて」と質問したとしても、AIはその裏側で、
- 〇〇 おすすめ
- 〇〇 比較
- 〇〇 料金
- 〇〇 評判
- 〇〇 選び方
といった複数の検索クエリに分解して情報を集めている可能性があります。
そのため、まずはクエリファンアウトで利用される主要な検索クエリにおいて、自社コンテンツが検索結果上で競争できる状態を作る必要があります。
そのうえで、AIがページを取得した際に、「このサービスをおすすめできる理由」を記事から使えるようにすることが重要です。
つまり、
SEOによってAIの参照候補へ入り、LLMOによって推奨理由を供給する
という一連の設計が必要になります。
「記事がなければ作る、あれば直す」
実際の施策判断はシンプルです。
まず、対策したいテーマに対して自社に適切な記事が存在するかを確認します。
記事がなければ、新規記事を作る。
記事は存在するものの主要クエリで検索順位が弱ければ、SEO改善を行う。
すでにAIから参照されているにもかかわらず自社が推奨されていなければ、KBF・RTBを整理して記事をリライトする。
そして、意図した理由で推奨される状態まで作れたら、その勝ちパターンを他の記事やテーマへ横展開します。
実例① 参照数はほぼ変わらず、参照時推奨率が大きく改善
まず、ある企業の比較検討系コンテンツで行った検証です。
対象となったのは、AIからすでに一定数参照されている2本の記事でした。
一方で、その記事が参照された際に自社サービスが推奨される割合は十分ではありませんでした。
つまり、「参照面は取れているが、推奨材料が弱い」状態です。
そこで、
- サービス名を記事内で明示する
- ユーザーが比較時に重視するKBFを整理する
- 各KBFについて、自社を評価できるRTBを明文化する
- 冒頭部・結論部を中心に配置する
という改修を行いました。
| 記事 | 参照数 (改修前 → 改修後) | 参照時推奨率 (改修前) | 参照時推奨率 (改修後) | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| 記事A | 約200 → 約190 | 約23% | 約79% | +55pt |
| 記事B | 約50 → 約60 | 約59% | 約95% | +35pt |
※参照時推奨率:AIが当該記事を参照した回答のうち、自社サービスが実際に推奨された割合
元データでは、それぞれ参照時推奨率が23.4%から78.5%、59.3%から94.7%へ改善しています。
ここで注目したいのは、参照数自体はほぼ増えていない点です。
にもかかわらず、その記事が参照されたときに自社が推奨される割合だけが大きく改善しました。
これは、AIに記事を「見つけてもらえるようになった」のではなく、AIがすでに参照していた記事の中身を変えることで、推奨結果そのものが変化したことを示しています。
実例② 数行の追加で、参照時推奨率が約53%から約90%へ
別の企業でも、同様の検証を行いました。
対象となったのは、サービスの利用方法に関する解説記事です。
このページも、記事自体はAIからすでに参照されていましたが、自社サービスの参照時推奨率は約53%にとどまっていました。
そこで記事末尾に、
サービス名 + ユーザーが重視する特徴 + その評価理由
を一つのパッセージとして追加しました。
記事全体を書き直したわけではなく、改修したのは一部分です。
その結果、参照数は15回 → 15回と変化しなかった一方、参照時推奨率は53% → 90%まで改善しました。
さらに興味深いのが、AIの回答内容です。
追加したパッセージに含まれていた「サービス名 + 特徴」に近い表現が、その後のAIの推奨理由にも反映されました。
これは、自社記事内でどのように自社の強みを言語化するかによって、AIが自社について語る内容そのものを変えられる可能性を示しています。
AI時代のオウンドメディアは「推奨理由の情報基盤」になる
今回の検証で最も重要なのは、記事への参照量そのものを増やさなくても、記事に書かれている情報を変えることで、AI上の推奨結果が変化した点です。
これは、AI時代のオウンドメディアの価値を考えるうえで重要な示唆だと考えています。
これまでオウンドメディアは、
検索する → 検索結果からWebサイトをクリックする → 記事を読む → サービスを検討する
という行動を前提として設計されてきました。
しかしAI検索では、
ユーザーがAIに質問する → AIが複数のWebページを調査する → 情報を統合する → AIがサービスを比較・評価する → ユーザーへ推奨する
という情報探索も増えていきます。
この場合、ユーザー自身が記事をクリックしなくても、オウンドメディアに書かれている内容が、
- どの企業が候補なのか
- それぞれ何に強いのか
- どんな人に向いているのか
- なぜそのサービスを選ぶべきなのか
をAIが判断する材料になります。
だからこそ、AI時代のオウンドメディアには、検索流入を獲得する資産という従来の価値に加えて、AIが自社を評価・推奨するための根拠を供給する情報基盤という新しい価値が生まれているとLANYでは考えています。
なお、ここでいう施策は、AIモデルそのものに自社情報を学習させるものではありません。
今回確認しているのは、AIがWeb検索・情報取得を行う際に自社記事を参照し、そこに記載されている内容を回答生成へ利用するという現象です。
その意味で、これからのオウンドメディアには、「流入を獲得する場所」であることに加えて、「人とAIの双方に、自社が選ばれる理由を伝える場所」としての役割も求められていくのではないでしょうか。
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