SEOのカンファレンスは、もうSEOのカンファレンスではなかった ── SMX Advanced 2026 参加レポート

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 SMX Advanced

2026年6月3日から3日間、ボストンで開催された SMX Advanced に参加してきました。世界でも最高峰とされる検索マーケティングのカンファレンスですが、会場で強く感じたのは「これはもう"SEO"のカンファレンスではない」ということでした。

このレポートでは、私(LANY代表 竹内)が、3日間を通して感じた最前線のSEO(あるいはAI検索最適化)についてまとめたものになっています。

本レポートは全セッションを網羅するものではなく、世界のSEOマーケター(あるいはAI検索マーケター)がいま何を考えているのかを、私が特に興味深いと感じた点に絞ってまとめます。

※SMXは、検索マーケティングのイベントであり、SEOとSEM(検索連動型広告)のそれぞれのセッションがあります。私が、SEOのセッションに絞って参加したため、レポート内容もSEOについてまとめたものになっていることをご了承ください。

SEOという言葉が、終わりつつある

大前提、”SEO is dead.” と言いたいわけではありません。SEOは引き続き重要ですし、SMXでもその旨は多くの登壇者から伝えられていました。

ただ、確実に数年前に語っていた “SEO” と、現在語られている “SEO” には大きな変化がありました。

今回いちばん強く感じたのは、その変化です。登壇者たちのSEOの定義(≒ 仕事の範囲)が明らかに広がっていることでした。

従来の “SEO” 、いわゆる重要なキーワードを上位表示させて、サイトへのトラフィックおよびそこからのコンバージョンを獲得する手法は、引き続き重要です。しかしながら、AI検索によるゼロクリック検索がメインストリームになってきたことによって、キーワードを検索エンジンで上位表示させるだけでは以前ほど事業に貢献できなくなりました。

では、世界の最前線で活躍するSEOマーケターは今何を考えているのか。それは、AI Visibility(可視性)をはじめとするオーガニックチャネル全体での可視性を高めることによって、サービスやプロダクト(≒ ブランド)の露出を最大化することへの注力です。

具体的には、デジタルPRやソーシャルメディア、YouTubeやRedditといった海外で影響力の強い媒体のマーケティングなど、これまでは「SEOの外側」もしくは「SEOのごく一部」とされていた領域が、当たり前のように彼らSEOマーケターの守備範囲になっているのです。

とあるセッションでは、部署名を「SEO」から「オーガニックメディア」に変更したとも語られていました。

The AI Pivot「59%がソーシャルのブランドプレゼンスを優先」「44%が権威性に投資」など、海外のマーケターが従来型のSEOからオーガニック全体(ソーシャル、GEO/LLMO、オウンドメディア)へいかに予算と戦略をピボットさせているかがわかる
(参照:From search to genAI- New research on consumer trust, brand strategy, and discovery)

Growing 3rd party brand authority is a must via link building,community&PR第三者メディアでの権威構築には「デジタルPR」「リンクビルディング」「コミュニティマネジメント(ソーシャル)」の3つが不可欠であるとも語られていた。
(参考:Winning organic in 2026: A framework for surviving Google’s AI era)

中でも「デジタルPR」の領域に関する話題は特に多く語られていました。先月、シンガポールのAhrefs Evolveに参加した時にも感じましたが、デジタルPRがAI検索対策においては最も注目されている領域に感じます。

なぜなら、AI検索最適化では、いわゆる自社サイトの内部改善のような “SEO” よりも、第三者サイトを活用したサイテーション獲得の方が現時点ではインパクトが大きく、対策の軸足が外部サイトに比重として重きが置かれるようになっているからです。

つまり、インターネット上のありとあらゆるサイテーションを生み出し、コントロールすることが、最前線のSEOマーケターの当たり前の仕事になっていました。

よって、自社サイトの対策キーワードの検索順位・流入・コンバージョンという従来のSEO的なKPIだけではなく、ChatGPTやGemini、AI OverviewsやAI Modeといった「AI検索」を含むオーガニック全体での見つけられやすさ(Visibility)も、私たちが追いかけるべき成果になってきています。

また、全体のセッションを通して象徴的だったのは、「SEOの延長線上でAI検索を捉えている人」がほぼ登壇者にいなかったことです。多くの方が、部署名や役職名すら変え、自分たちの役割定義そのものを書き換えにいっていました。

日本でも「これはSEOなのか、新しいGEO/LLMOなのか」という議論は起きていますが、海外は議論の段階をすでに通り過ぎて、AI検索対策を中心に各が役割を広げる行動に入っている印象です。

ここはLANYとしても同じ見立てです。

AI検索最適化の対象は、もちろん自社サイト内では完結しません。自社サイトを含む "情報エコシステム全体" が戦場になり、マーケ部門だけでなくPRやソーシャルチームなどを巻き込む仕事になっています。

日本企業がAI検索に向き合うためにやるべきことは、「誰がこのAI検索の全体最適に責任を持つのか」という座組みの再設計だと強く感じました。

AI検索の成果が測れないことに、どう向き合うか

もうひとつ繰り返し語られたのが、AI検索の成果計測の難しさでした。これは私自身も大きな悩みですし、多くの企業にとって頭を悩ませてるテーマかと思います。

たとえば、下記のスライドのようにAI検索の成果はいくつかのパターンで考えることは可能です。

  • AI検索経由でサイトに流入する
  • AI検索上でコンバージョンする(ECのUCP経由でのチェックアウトなど)
  • AIによって意思決定がされて、Webサイトへの訪問する
  • AIによって純粋想起が高まり、最終的にWebサイトへ訪問する

前者2つであれば、GA4等の解析ツールで計測可能です。ただ、後者の2つはクリックなどがついてこないため、正確な成果計測は不可能です。しかも厄介なのが、後者2つの方が、前者2つよりもAI検索が与えている影響割合が大きそうな点です。これらもAI検索の成果計測を難しくしている要因の一つといえるでしょう。

AI経由のトラフィックなどの目に見える指標だけにフォーカスすると、対策の優先度を間違えたり、AI検索の影響を低く見積もりすぎる可能性が高くなります。

Influence happens without a click,this is why traffic and revenue alone fail as AI seach KPIs and goals

あるベテランの登壇者は、「現代は、インターネット以前のマーケティングに逆戻りしている感覚だ」と話していました。ラジオ広告を実際に何人が聞いたのか、道路沿いの看板の横を何台の車が通り過ぎたのか――正確には誰にも分からなかった、あの時代にまさに戻っていると。

その方の結論はシンプルで、プライバシー規制とAIにブラックボックスのチャネルの登場で、計測はすでにカオスになっている。だからこそ、現代のマーケターも「多少の不確かさを受け入れる覚悟」を持つべきだ、と強く語っていました。

上記のように、AI検索がアトリビューションが正確にが見られないだけでなく、Googleをはじめとする各プラットフォーマーがセキュリティ問題等も相まって、データをブラックボックス化し続けている以上、「多少の不確かさを受け入れる覚悟」は、精神論ではなく現実的な前提にすべきだと私も感じます。

ここからは私個人の感想ですが、計測しようとすればするほど、もしくは、目に見えるデータだけで考えれば考えるほど、AI検索がもたらす本質的な価値から遠のいていく感覚があります。

企業のマーケティング活動において合意形成を取るためにデータが必要なことは重々理解はしつつも、AI検索が当たり前に使われる時代の消費者の購買行動を解像度高く想像し、やるべきことを淡々とやる姿勢が必要なのではないでしょうか。

「AI検索最適化は、パフォーマンスマーケティングではなく、ブランドマーケティングである」ともどなたかが語ってましたが、まさにその通りです。

データは計測できないけど、シンプルに考えてみたら、消費者の購買に大きな影響を及ぼしてるよね、という感覚を、どのように組織として合意形成を行い、AI検索というチャネルに新たな投資をしていくのか。ここの突破が非常に難しいポイントであり、AI検索最適化を推進するマーケターの最重要な仕事かと思います。

3. AI検索は検証フェーズはとっくに終わり、マーケティングのインフラ的立ち位置になっていた

多くのセッションで語られていたAI検索最適化の戦略や戦術、フレームワークは、具体的かつ、すでに効果検証が何周も回っているようなものばかりでした。

「とりあえず試してみる」というPoC(検証段階)はすでに終わっていて、すでに組織として体制と予算を大きく投資して、本格的に対策をするフェーズに多くの企業が入っています。

日本だと「AI検索はSEOと同じなのではないか」という空気がまだあり、一部の先進的な企業がテスト的に取り組み始めている程度(むしろ、まだ取り組んでいない企業が多い印象)なのに対して、海外では多くの企業がすでに本格的に開始をしていました。

Profoundなどの、AI検索上でのブランドの見え方を監視・最適化するGEO(LLMO)専用ツールの成長がその象徴です。Profoundは創業からわずか1年半で評価額10億ドルのユニコーンとなり(2026年2月に約9,600万ドルを調達)、すでにTarget、Walmart、Figmaなど700社を超える大企業に導入されています。

AI検索への対応は、もはや一部で実施されてる先行的な実験ではなく、大手が当たり前に投資する前提になりつつあると確信しました。

示唆に富んだ具体的な話も多かったので、詳しい内容は別途「Tips集」としてまとめています。本レポートでは、最前線がすでに"実装フェーズ"に入っているという空気感だけ、お伝えしておきます。

4. AI検索最適化は、SEOなのか?GEO/LLMOなのか?

最終日のパネルディスカッションで、マイク・キングが放った「SEOとGEOは違う」という趣旨の発言には痺れました。

日本では、「LLMOはSEOの延長である」「SEOに取り組んでいたら大丈夫」という空気感も強く存在します。また、先日のGoogleの「AEOやGEOといった言葉は、つまるところSEOのことだ」という主旨の発信もあり、まだまだAI検索最適化の実態が何なのかは人によって大きく揺れている状態です。

今回のSMXの登壇者たちは、AI検索の登場を非常にポジティブに捉え、楽しんでいるような印象がありました。従来のSEOは当たり前に取り組みつつ、AI検索の登場によって何が変化し、自分たちが何を新たに取り組むべきなのかをフラットに考え直していたように感じています。

SEO担当者にとっては、このAI検索時代で主役になれる大きなチャンスであり、キャリアを広げるこの上ない機会であるとも多くの方が熱く語っていました。

役割の境界が溶けることを、脅威ではなく機会として捉える姿勢こそ、日本のSEO担当者(オーガニックメディア担当者)が真っ先に取り入れるスタンスだと感じました。

5. 世界の最前線のプレイヤーや業界を見て思ったこと

最後に、私の所感をダラダラと。

今回のカンファレンス参加目的は、「AI検索に、我々はどう向き合うのか?」「何をしていくべきなのか?」に対する自分が持っている仮説と、海外の最前線のプレイヤーたちが何をどんな熱量で考えているのかを彼らの温度感込みでぶつけることで、よりAI検索最適化の本質的な部分に近づきたいというものでした。

結果的に、自分に足りなかった視点が見つかったり、新たな発見があったり、これからのAI検索時代に何にどう向き合うべきかなど多くの示唆を得ることができました。

加えて驚いた(刺激をもらった)のは、登壇者や会場にいる方々の年齢層の高さでした。20年選手ですという人ばかりでした。

この領域で20年戦ってきた人たちが、いまも最前線で、自らAI検索の挙動をディグり続けており、年齢を重ねてもエバンジェリストに回るのではなく、自分の手を動かして 誰よりも科学している。その姿が、率直にかっこいいなあと感じたし、側から見ていても楽しそうでキラキラしていました。

それが成立する背景には、検索マーケターというスペシャリストにきちんと報酬が払われ、社内外での地位が高いという文化の差があると感じます。日本と海外のEC化率の差や人口規模(≒ マーケットの広さ)の違いもあり、一人の専門家が出すインパクトの大きさそのものが違うのはもちろんあるとは思いますが、職種に対する魅力度が、SMXを見るに非常に高いのではないかと私の目には映りました。

AIによって検索マーケティングは、計測しづらく、領域も曖昧な、扱いにくい仕事になりました。ただ、裏を返せば、消費者の購買行動や検索ジャーニーをきちんと想像し、情報エコシステム全体を設計できる人にとっては、これ以上ない主役の時代が来ていると感じます。

また、その主役にもっとも近いのが、これまで検索やGoogleのアルゴリズムに向き合ってきた我々SEOマーケターだとも改めて確信しました。そして、日本でも、SEOマーケター(もしくはAI検索マーケター、もしくは、その他どんな呼称でも)がもっと魅力的な仕事になると嬉しいなとも思いました。

AIの登場で大きく変わったマーケティングの世界を、私も最前線で楽しみたいと強く感じる良い時間でした。

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担当メンバー 竹内 渓太

株式会社リクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やBtoBマーケティングなど多種多様な業務を経験。その後、株式会社LANYを創業し、Webメディア・サービスサイト・データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでいる。

X・YouTubeチャンネルで「SEOおたく」としても情報発信中。著書『強いSEO』『強いBtoBマーケティング』『強いLLMO』(エムディエヌコーポレーション)出版。

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