「露出」から「指名」へ。AI検索で"選ばれる"ブランドがやっていること - LLMOカンファレンス イベントレポート

「露出」から「指名」へ。AI検索で"選ばれる"ブランドがやっていること - LLMOカンファレンス イベントレポート
目次

生成AIによる検索体験の変化は、もはや「これから起こること」ではなくなりました。AIモードやAI Overviewsは浸透し、ChatGPTやGeminiは日常的に使われています。ユーザーは答えをAIから直接受け取り、そのまま意思決定まで進めるようになっています。

そして2026年、論点は明確に移りました。「AI検索にどう備えるか」から、「AI検索でどう成果を出すか」へ。AI経由の認知や売上が実際の数字として立ち上がり、施策の成否が事業インパクトとして跳ね返るフェーズに入っています。

では、AIに選ばれるために、何を、どの優先順位で実行すべきなのか。そしてその実行は、プロダクト、サイト制作、PR、広告、採用まで、どこまでの領域を巻き込むのか。

そんな疑問に答えるべく、LANYは2026年7月22日に「LLMOカンファレンス AI検索時代のマーケティング総合戦略」を主催。検索・PR・ブランディング・広告などの第一線で活躍する8社が集結しました。

お申し込み者数1,000名を突破し、多くの方にご参加いただいた大盛況のカンファレンス。 戦略設計から具体施策、実際に成果が出た事例まで、セッションの内容をダイジェストでお届けします。

1. LLMOに1年本気で取り組んで見えた答え

トップバッターは主催のLANYから代表の竹内が登壇。1年半にわたるLLMO支援で蓄積した成功事例と失敗事例から見えた「答え」を提示しました。

AI経由の認知が25%。AI検索はすでに事業を左右する顧客接点

①AI検索は、すでに事業成果を左右する顧客接点になっている

竹内はまず、LLMOの事業インパクトを数字で示しました。

LANYの問い合わせ時アンケートでは、認知経路の25%がAI経由。GoogleなどのWeb検索に次ぐ2番目の経路です。支援先でも、あるBtoCサービスは認知経路の約30%がAI、美容クリニックではAIが売上シェアの約10%を占める成果が出ています。

一方、GA4で計測できるAI経由のコンバージョンは全体の約0.5%。ですが、これは一部に過ぎません。数%が計測されているならば、その裏側には何倍もAIを使うユーザーがいることが考えられます。

明確なデータの把握が難しいAI検索の領域では、計測できる数値だけでROIを判断しないことが重要です。

露出はスタートライン。比較で「選ばれる」までがゴール

③重要なのは露出ではなく、比較選ばれること

LLMOに着手すると「AI上でどれだけ自社名が出るか」を追いたくなります。しかし竹内は、そこが本質ではないと指摘しました。

AI検索は「アンサーエンジン」と呼ばれます。しかしユーザーは、回答を得た時点で対話をやめません。「この中ではどれがいいのか」と深掘りし、意思決定まで進む。つまりAI検索は「ディシジョンエンジン」でもあります。

相談段階で候補に入るのが「露出」です。その先にあるのが「指名」。「A・B・CのなかならあなたにはAが最も合います」と指名されるところまで届かなければ、事業成果にはつながりません。AIに選ばれ回答に登場し、その回答を読む人間にも選ばれる。竹内はそこまでがLLMOの守備範囲と定義しました。

プロンプト → KBF → RTB → 配置。推奨率18%を49%に変えた4ステップ

LLMOで成果が出る構造

竹内は、AI検索の裏側の仕組みはブラックボックスに見えても、分解すれば単純であると整理しました。この仕組みを分解すると4ステップになります。

①想起されたいプロンプトを定める

②AIが何を基準に比較しているか(KBF)を特定する

③その基準を満たす証拠(RTB:Reason To Believe)を整理する

④AIが参照する面に配置する

セッションでは、これらをベースにしたLLMOコンサルティング支援の成果事例も共有されました。インフラ企業様や大手ビジネスメディア様における成果は、AI検索における推奨状況の改善が十分可能であることの証左といえます。

AIの参照がリアルタイムで行われる領域では、SEOでは半年から1年かかる成果が翌日に動くこともあります。仕組みを理解した分析の上で取り組むことで、事業インパクトを出しやすい領域といえるでしょう。

2. AIに選ばれるための文脈を特定し、施策に落とし込む

竹内が示した「KBFを特定し、RTBを配置する」という設計図。では、その根拠を「どこに」「どう語られる形で」置けばよいのか。株式会社TechFabricの平大志朗氏は、AIの引用元を起点にその問いを具体化しました。

「良い商品をつくり、良い評判を生む」では施策にならない

「良い商品をつくり、良い評判を生む」では施策にならない

LLMOの議論は「外部で言及してもらいましょう」「良い評判をつくりましょう」に落ち着きがちです。平氏はそれを正しいと認めた上で、そのまま施策に落とし込むのは難しいことを指摘しました。

AI OverviewsやChatGPTでは、AIが参照した情報源を確認できます。そこを起点にすれば、抽象論を「どの媒体に、どの文脈が足りないのか」まで具体化できる。これが本セッションの主題です。

128キーワード調査。この商品はなぜ推奨されないのか

平氏はある機能性アパレル系ブランドのスーツを題材として、AI検索の状況を解説しました。高い耐久性と手頃な価格帯を両立し、家庭でのお手入れがしやすいという便益があります。しかし、このブランドは従来から異なる特定文脈でのイメージが強く定着しており、そのギャップからAI検索にはほとんど登場しません。

そこで平氏は、非指名の128キーワードで調査しました。このブランドを想起していない人が、便益に合う言葉で検索したときにどう見えるかを確かめる狙いです。

128キーワード調査

AI Overviewsの枠が表示されたのは72キーワード(56%)。そのうちこのブランドが登場したのは、わずか8件でした。参照された256URLのうち、このブランドのスーツに言及していたのは17ページ、6.6%にとどまります。

内訳を見ると「撥水」「低価格」など、商品特性と検索意図が直接一致する領域では表出する一方、顧客層を広げる鍵になる「洗える」「涼しい」では、ほとんど候補に入っていない状況でした。

相関係数0.77。ただし言及の「量」だけでは足りない

AIOブランド表示KW数×引用発生数の相関

AI検索結果への登場回数と、参照元での登場回数を散布図にすると、相関係数は0.77。強い相関があります。しかし重要なのは、そこに現れた外れ値です。

リーズナブルなオーダースーツで知られる別のブランドは、AIが参照した情報源には29回登場しています。にもかかわらず、AI回答への登場はわずか2回でした。

理由は文脈のズレです。外部ページでこのブランドは「リーズナブルなオーダースーツ」として紹介されています。しかしそれは「オーダースーツの中では安い」という意味であり、調査対象に含まれていた「とにかく安いスーツを購入したい」「1万円以下のスーツを探している」という検索意図とは、価格帯が噛み合いません。29回言及されていても、意図と一致しない文脈での紹介は回答に採用されないのです。

必要なのは言及の量だけではなく、検索意図と一致する文脈での言及です。その上で平氏は、LLMOの大前提はあくまで商品の価値を磨くことだと伝えました。ただ、良い商品であっても、その価値が100%正しく伝わるとは限りません。だからこそAIに対しても、広報・宣伝活動を含めて価値を正しく伝播させ、意図した情報空間を構築するべきであると説きました。

「どの顧客領域では伝わっていて、どこでは伝わっていないのか。その理由は何か」をデータで分解していけば、施策は具体化します。そして突き詰めれば、それは商品そのものや営業活動の改善にもつながっていく。LLMOはビジネス全体の最適化になり得るのです。

3. LLMOはマーケティングだけの仕事ではない

平氏が示したのは「語られ方」の設計でした。では、語るべき価値そのものはどこから生まれるのか。株式会社NexGenのCPO・三枝祐樹氏は「LLMOはプロダクトから考えるべき」と切り出しました。

AIの登場で、情緒価値と機能価値が分離する

情緒と機能が、AI時代に分離する

これまでブランド価値は、「格好いい」という情緒価値と「性能が良い」という機能価値が一体となっていました。人がその融合体を受け取り、意思決定していたからです。

しかしAIは「なんとなく好き」という感覚を持ちません。どのような機能があり、どのような価値があるのか。合理的に判断するAIには、それを数字と構造で伝え、評価ロジックに入れてもらう必要があります。AIの登場によって、情緒価値と機能価値は分離する。マーケターは「人には情緒価値」「AIには機能価値」と、双方への対応を求められます。

機能価値は発信ではつくれない。商品構造そのものに実装される

機能価値は発信では作れない、商品構造そのものに実装される

では機能価値はどこでつくられるのか。三枝氏は価値を氷山に例えました。訴求コピーは水面上の一角にすぎず、それを支えるのはプロダクトが持つ価値そのものです。

例として挙げたのはレイクの「365日間無利息」。表面上は単なるコピーに思えるかもしれません。しかし水面下では、業界水準の30日、自社従来の60日から365日へ拡張するために元々の制度自体の変革を行っています。店舗のDXによる固定費削減やWeb限定申し込みを実施し、採算構造そのものを変えています。

つまりレイクの「365日間無利息」とは、経営とプロダクト全体の意思決定を通じて実装された機能価値といえるでしょう。

AIが推奨の根拠とする機能価値を作るには、全社的な変革が必要になる場合もあります。このことから、「LLMOはマーケティング部門だけで完結する話ではない」ということが分かります。

現状分析・課題仮説・検証・実装と証拠化の4ステップ

プロダクト価値は、この順番で作る

次に、機能価値をつくる手順として4ステップが示されました。

①「規模」と「熱量」の2軸で市場と顧客を捉える現状分析

②選ばれる理由の仮説を立てる課題特定

③ユーザー・意思決定者が「本当にお金を払うか」を確かめる検証

④価値をプロダクトに実装し、AIが読める形に構造化する証拠への変換

当日のセッションでは新規事業、既存事業の2つの事業をもとに解説され、機能価値はゼロからでも既存プロダクトからでも生み出せると結びました。

4. Web制作会社から見たLLMO。何をすべきで、何をすべきでないか

次のセクションでは、株式会社ベイジ代表の枌谷力氏が、顧客から「AIに引用されるサイトにしたい」と相談された際、どのような考え方でサイトを設計しているのかを解説しました。

問い合わせの18%がAI経由。LLMOはBtoBでも当たり前になる

AIからの問い合わせ

ベイジは問い合わせフォームで、認知のきっかけを聞いています。2026年1月から6月までの問い合わせ265件のうち49件、18%が「AIで知った」と回答しました。6月単月では約20%を占めています。

AIで企業を知る流れは、BtoBでも一般化していく。枌谷氏は、こうした自社の経験も踏まえてLLMOを捉えています。

LLMOで前面に出てくる5つの論点

LLMO特有の視点

「良いプロダクトやサービスを作り、良いコンテンツを発信していれば、AIは引用・推薦してくれるはず。マーケティング戦略やコンテンツ戦略の弱さを、LLMOで挽回できるほどの効果はない。ただし、現時点では技術的に不完全なため、可能な範囲で技術に寄り添った方がよい。」

これが枌谷氏の基本的なスタンスです。

その上で、SEOと比べてLLMOで特に意識される論点として5つを挙げました。

①Google以外のクローラーへの対応

②文章を小さく分けて扱う「チャンク」

③エンティティ認知、特に情報の一貫性

④サイト外での言及

⑤SEOとは異なる効果検証の方法

生成AIが回答をつくる流れは「クロール→パース→チャンク化→ベクトル化→類似検索→回答生成」。

このプロセスをなるべく邪魔しない作りにすることがLLMOだと捉えられると説明します。

注目すべき3つの分野。サイト内でできること、できないこと

3つの分野

生成AIが情報を取得して回答する仕組みから、LLMOで注目すべき領域を「コンテンツ設計」「内部構造の設計」「外部での言及」の3つに整理しました。

分野1:コンテンツ設計

大前提は、「人間にとって、分かりやすく、読みやすく、価値のあるコンテンツを作ること」です。

例えば、結論を先に書く、見出しを具体的にする、チャンク単位でも情報がある程度完結するようにします。「採用について」のような抽象的な見出しではなく、「採用ブランディングとは何か」のように内容が分かる形にする例も紹介しました。

ただし、こうした書き方はLLMO特有の技法ではなく、人間に読んでもらう上でも重要な古典的な文章術に近いと枌谷氏は指摘します。文章を細かく調整する効果も十分には証明されていないため、細かな最適化より、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを作ることを重視すべきであると伝えます。

分野2:内部構造の設計

内部構造についても、LLMO特有の対策をするというより、Web標準に沿ったサイトをきちんと作ることが基本となります。セマンティックHTMLや構造化データなど、従来から重要だった設計を、AIクローラーにも読み取られやすい形で整備することが重要です。

数百・数千ページあるサイトでは、構造化データを手作業で設定するのは現実的ではありません。CMSのフィールドやデータベースの設計から考える必要があります。

また、AIクローラーはGooglebotと同じようにJavaScriptを処理できるとは限りません。そのため、ページを読み込んだ直後の初期HTMLに必要な情報を含めることが重要であると示しました。

分野3:外部での言及(サイテーション)

LLMOでは、自社サイトの情報だけでなく、外部でどのように言及されているかも重要になります。

枌谷氏は、自社サイトだけで「私たちは素晴らしい」と伝えていても、それだけではAIは評価しないと説明します。

一方、この領域はWeb制作会社がサイト制作だけで対応できるものではありません。ベイジのクライアントワークで主に扱うのは分野1と2で、外部での言及はWeb制作の範囲を超え、マーケティング活動として取り組む領域だと整理しました。

5. AI検索×広告の最新動向。ChatGPT広告の検証結果

ここまではオーガニックな情報空間の話でしたが、AI検索にはすでに広告という面も生まれています。

次のセクションでは、株式会社オプトの熊田吾一氏、野嶋友博氏が登壇。今年6月中旬にローンチされたChatGPT広告の実地検証を公開しました。

クエリからインテントへ。広告メニューも文脈を捉える方向に

熊田氏がまず指摘したのは、比較検討が行われる「場所」の移動です。

比較・検討がWebサイト訪問前に進む

従来、ユーザーは複数のサイトを訪れてから比較していました。しかし現在は、サイトに来る前にAI上で比較検討が済んでいます。つまり自社サイトにたどり着いた時点で、候補の絞り込みはすでに終わっているということです。

実際、外部調査のデータでは、70%以上のユーザーがカテゴリーやブランド、商品を調べるためにAIを利用しているという結果が出ています。

この状況に合わせて広告側も変化しています。従来の検索広告はクエリをどう捉えるかが中心でしたが、現在はインテントをどう捉えるかへ移行。Google広告のAI Maxも、ユーザーの意図を参照して配信先とLPを自動化しています。

ChatGPT広告ではキーワード指定ができず、ほぼ唯一ターゲティングに近い機能として、どのような会話に出すかを文章で記述する「コンテキストヒント」が用いられます。

文脈型コピーはCVRが約2倍。会話に溶け込む設計が効く

オプトはChatGPT広告におけるコンテキストヒント、広告テキスト、バナー、LP、入札の5観点で検証を実施しました。

検証②コピー例の比較

広告テキストでは2種類を並行して配信。

キャンペーンや便益を前面に出す従来型と、「こんな選択肢もあります」と第三者が追加情報を添えるような文脈型で検証を実施しました。

結果は文脈型がCTR・CVRともに高く、特にCVRは約2倍でした。広告ではなくAIが生成する回答の追加情報として受け取られたことが差につながったと熊田氏は分析します。

検証③バナー・文字だけの方がimpressionを集めた

バナー検証でも同様の傾向が出ました。

文字だけのシンプルなバナーは、表示回数が約2倍に。現時点でコンバージョン最適化ができないため、CPAまで含めた優劣は断定できませんが、注目すべき効果が生まれています。

LPは結論ファースト、入札には学習が効く

一方、仮説が外れた検証もありました。LPは文脈を一貫させた方が強い。そう仮説を立てましたが、結果はもともと用意していた通常LPの方がCVRが高くなりました。

検証④結果:通常LPの方が強かった

ユーザーはAIとの会話で、情報をある程度得た状態でクリックします。LPでは説明の繰り返しより、「結局どれを選べばよいのか」という結論を求めているのかもしれません。

入札では、200円から段階的に50円まで下げたところ、CPCは119円から50円へ低下。単価以外を変えていないにもかかわらず、CTRが上がっていました。

入札抑制だけでなく、媒体側の機械学習が進んで良い広告と評価された可能性があります。

熊田氏は、セッション内でChatGPT広告において最も重要な要素は「インテント」であると答えました。実際に商品やサービスを検索する人たちのペルソナを読み解き、コンテキストヒント・広告・LPを一貫設計することが求められると提示しています。

6. AIの文脈は戦略PRで仕込む

自社サイトや広告の外側にある、第三者の情報空間をどう動かすのか。株式会社IDEATECHの競仁志氏は、戦略PRの視点から「サイテーションを増やす」だけではないLLMOの考え方を解説しました。

サイテーションは「どんな文脈で言及されるか」が重要

狙い通りの第三者減給とそうでない言及(メディア掲載)

「BtoB領域に強い戦略PR会社」という認識を得たい会社が、「ユニークな福利厚生があります」という内容でメディアに取り上げられても、その目的にはつながりません。

一方、「グローバル企業のローカライズ戦略を成功させた背景にあるPRとは」という記事の中で言及されれば、自社が獲得したい認識と結び付きます。

競氏が強調するのは、第三者言及の有無だけではなく、「どんな文脈で認識を持ってもらうか」です。「サイテーションを取りましょう」という言葉だけに踊らされるべきではないと話しました。

AIにも選定基準がある。選ばれ方に影響を与える

「調査PR会社のおすすめを教えて」と聞かれたとき、AIは複数の候補を集め、何らかの基準で絞り込んで推薦します。

だからこそ戦略PRでは、AI上でどんなカテゴリ想起を取りたいかを定め、そのカテゴリで「何を基準に選ぶべきか」という判断軸に影響を与えることが重要です。選定基準を言語化し、その材料となる情報を市場に流通させます。

花王(国内)「いい洗剤=白さ」→「いい洗剤→除菌力」市場獲得へ

例として紹介されたのがP&G「アリエール」です。

「いい洗剤=白さ」という市場の認識に対し、「除菌も重要ではないか」という論点を提示。専門家との実験やメディア報道を通じて、「いい洗剤=除菌力」という新しい基準を市場に浸透させました。

商品の機能を訴求するだけでなく、「なぜそれが必要なのか」を社会に問い、市場の常識を変えた戦略PRの事例です。

AIに対しても考え方は同じです。AIには人間のような直感や「なんとなく」がないからこそ、選定基準を言語化し、ファクトで裏付けることで推薦構造に影響を与えられると競氏は説明します。

調査で、選定基準に客観的な裏付けを与える

ただし、自社に都合のいい選定基準を主張するだけでは、ポジショントークになってしまいます。そこで競氏が重視するのが、調査による裏付けです。

では、具体的に何をすればよいか?

まず「自社がAI上でどんなカテゴリで見られたいか」を決めます。そのカテゴリが大きすぎれば競合が多く埋もれてしまい、逆に小さすぎれば市場そのものが存在しません。

自社が構造的に勝てる規模を見極めることが出発点になります。

そのうえで、そのカテゴリの中で「何を基準に選ばれるべきか」という業界や社会にとって意味のある論点を設定し、調査データで客観性を持たせます。

こうして裏付けを得た論点をプレスリリースに落とし込み、メディア掲載や寄稿などへ展開していく。競氏は、プレスリリースを「メディアや言及の元」と位置づけています。

7. AI時代のプレスリリースはどう変わるのか

競氏が語った第三者言及を、プレスリリースの実務ではどう生み出すのか。LANYの浅井がモデレーターを務め、株式会社PR TIMESの柏木択斗氏に聞きました。

プレスリリースには「読まれる」と「広がる」の2つの役割がある

12万社以上が利用するPR TIMES。柏木氏は、AI検索時代のプレスリリースには、「プレスリリース自体が人やAIに読まれる」ことと、「メディア掲載など第三者コンテンツが広がる起点になる」ことの2つの役割があると整理します。

プレスリリースには、2つの役割がある

AIや検索に見つけてもらうタイトル設計

では、プレスリリース自体を「読まれる」ものにするには、何を意識すればよいのでしょうか。

①の事例

その一つがタイトルです。「誰に届けたいか」「どんな検索をされたいか」を考え、その言葉をシンプルにタイトルに入れます。

ナイフブランド「FEDECA」を運営する神沢鉄工では、「こども 包丁」という検索されそうな言葉をタイトルに盛り込みました。柏木氏によると、実際に「こども 包丁」で検索すると上位に表示されやすく、AI検索でもFEDECAのコンテンツが表示されたといいます。

メディアフックは、時流・地域性・社会性

一方、もう一つの役割である『広がる』ために重要なのが、メディアに取り上げてもらうための工夫です。

柏木氏は、メディアが「報じたい」と感じる切り口を「メディアフック」と呼び、その中から時流・季節性、地域性、社会性・公益性を紹介しました。

②メディアフックを盛り込む

時流・季節性では、同じ情報でも出すタイミングによって情報価値が変わります。地域性では、情報を求めている地域紙や業界紙などで取り上げられることで、Web上にも自社の情報資産を積み上げられます。

またメディアは企業の宣伝ではなく、読者にとって有用な情報を届けたいもの。社会性・公益性を持たせることで、「読者にとって重要」という文脈につながります。

ファクトだけでなく、「なぜやったのか」を伝える

柏木氏が3つ目の工夫として挙げたのが、背景(Why)を盛り込むことです。

ファクトの手前にある「背景」を盛り込む

事例として紹介した株式会社コウダプロの「大人のカレースパイス」は、開発者自身の「本当は辛いカレーが好きなのに、子どもに合わせて甘口を食べている」という悩みから出発。調査によって同じ悩みを持つ親が81%いることを可視化し、「家庭内カレー問題」として社会の問題へ広げました。さらに、約1年・100回以上の試作という開発の物語まで伝えています。

柏木氏は、ファクトだけでは差別化しづらいからこそ、「なぜやったのか」という背景に価値があると話します。

社内に眠る情報を掘り起こすのは、人の仕事

最後に柏木氏が強調したのが、AIでは整理しきれない「社内に眠る一次情報・背景・想い」を見つけ、意味づけすることです。

社内会議に参加する、議事録をもらう、開発段階の調査を見に行く。プレスリリースに載せる価値ある情報そのものを社内から見つけ出すことは、これからも人の仕事であると示しました。

8. AI検索で引用されたかを、どう可視化するか

発信した情報が、実際にAIに引用・言及されているかをどう測るのか。Ahrefs Pte. Ltd. の河原田隆徳氏は、発信して終わりにせず、データを見ながら次の施策につなげる方法を解説しました。

AIが引用するドメインは、短期間でも変わる

AIが引用するドメインは、2か月で入れ替わる。固定ではない。

主要なAI検索が日本語回答で引用するドメインを見ると、短期間でも順位や顔ぶれは変化します。YouTubeは1位を維持する一方、noteが5位から2位へ上昇。Yahoo!知恵袋、Reddit、PR TIMES、mybestなども上位に入っています。

重要なのは、特定のメディアが常に強いわけではないということです。

AIが引用する場所は固定されていないため、一度調べて終わりではなく、定期的に確認する必要があります。

約7万5,000ブランドを調査。Web上の「メンション」と相関

AI減給と相関するのはメンション(被リンクではない)

約7万5,000ブランドを対象としたAhrefsの調査では、AIでのブランド言及と最も強く相関していたのは、ブランド名が「言及される量」でした。

この調査では、WebやYouTube上で多く語られているブランドほど、AIに質問した際にも回答の中で名前が挙がりやすい傾向が見られました。特にYouTubeやWeb上のメンションとの相関が、被リンクよりも強く出ています。

AI検索により従来の検索流入も変化している

AI検索の普及によって、従来の検索成果にも変化が出ています。AI Overviewsが表示された検索結果では、オーガニック1位のCTRが低下。2026年6月時点で、日本では予測値24.1%に対して実測9.0%でした。

AI概要(AI Overviews)で1位のCTRが急落

ただし、顧客が消えたわけではありません。AI検索経由では、1セッションあたりの外部クリック数やコンバージョン率が検索経由を上回るデータも紹介されました。

河原田氏は、従来の検索流入だけでなく、AI上で「引用されたか」を可視化する必要性を示します。

需要のあるキーワードから、追うべきプロンプトを設計する

AI検索をモニタリングするときに避けたいのが、「自社が推奨されそう」という想像だけでプロンプトを作り、モニタリング対象とすることです。

しかし、AI利用者が実際に入力しているプロンプトは公開されていません。

そこで河原田氏は、実際に検索されているキーワードを起点に、ユーザーがAIに聞きそうな質問へ変換してプロンプトを設計する方法を紹介しました。

実際の検索需要を起点にすることで、自社の主観ではなく、ユーザーの関心に近いプロンプトをモニタリングできます。

実践:需要のある用語でプロンプトを組み立てる

また、AIは一つの問いを複数の検索に分解する「クエリファンアウト」を行います。

1つの問いから平均9〜11個のサブクエリが生まれ、Deep Researchでは420回検索した事例もあります。一方で、その95%以上は検索需要がほぼないというデータも提示されました。

重要なのは、ファンアウトされたクエリをすべて同じ優先度で追うのではなく、AIが参照する観点を把握したうえで、人の検索需要も重ねて優先順位をつけることです。

AhrefsのブランドレーダーでAI検索の引用・言及やファンアウトクエリを確認し、キーワードエクスプローラーの検索需要と照らして、見るべきクエリを絞り込む。さらにAhrefsと接続したAIワークスペース「Letaido」でダッシュボード化・自動追跡することで、「発信→計測→改善」のサイクルを回せると説明しました。

9. 採用LLMO。AIは候補者との出会いも、辞退も左右する

最後のセッションは、LLMOを採用マーケティングにどう活用するか。LANYのLLMOコンサルタント・大西が、独自調査と実例をもとに解説しました。

サイレント辞退87.4%。AIは企業との出会いだけでなく、辞退にも影響する

LANYは、選考中にAIで企業情報を調べた求職者を対象にアンケートを実施。

AIとの対話で、それまで知らなかった企業を提案された経験がある人は94.6%。また、31.4%の人がAI経由で知った企業に実際に応募した経験があると答えています。

新たな認知経路としてのAI

一方、AI上でネガティブな情報や誤った情報に触れ、応募の取りやめや選考・内定を辞退した経験がある人は87.4%にのぼります。

AI検索が採用マーケティングに与える影響

実際に企業からは、「ブラック」「残業が多い」といった事実と異なる情報が表示され、応募率や内定承諾率への影響を懸念する声が寄せられています。また別の企業では、「安定・堅実」と紹介されることで、挑戦志向の人材が他社へ流れるのではないかという不安も挙がっています。

候補者がAIに聞く「問い」からコンテンツを設計する

採用LLMOで重要なのは、「候補者がどんなことをAIに聞くか」を起点に考えることです。

例えば「SEOコンサルに新卒で挑戦するなら」と聞けば、AIはキーワード「SEOコンサル 新卒」での拡張検索などを実行し、業界・職種の情報を探す場合が多くなります。

一方、「若手の裁量が大きく、20代でマネージャーを目指せる会社は?」と聞けば、「若手」「裁量」「マネージャー」といった就活軸の情報を探します。

傾向①“想定プロンプト起点”のコンテンツ設計がカギを握る

同じ会社でも、候補者の問いによってAIが探す情報が変わるため、採用したい人材が聞きそうな問いから逆算してコンテンツを用意することが重要です。

LANYでは、「新卒で就活をしています。SEOに興味があるのですが、おすすめの会社はどこですか?」というプロンプトを50回試したところ、80%の確率で自社が推薦されていました。

実際に、AIとの対話をきっかけにLANYを知り、応募した学生も出ています。AI上での推薦が、候補者との新しい出会いにつながり得ることが、この事例によって示されています。

想定される不安に、直接答える情報を置く

採用LLMOにおいてもう一つ重要なのが、応募や内定前のリスクを確認するプロンプトへの対策です。

例えば「研修はちゃんとしていますか?」と聞かれたとき、対応するコンテンツがなければ、AIは「一般的にベンチャー企業は研修体制が手薄」といった業界の一般論で回答することがあります。

そこでLANYは、新卒研修の実態を伝える動画を公開。「ベンチャーは研修が雑と聞くのですが、株式会社LANYはどうですか?」というプロンプトを50回試したところ、46回、92%でその動画が参照されました。

LANY事例②就活生の不安(リスク確認プロンプト)に対応するコンテンツ作成

その結果、AIから「一般的にベンチャーは研修が手薄」といった一般論ではなく、「LANYの新卒研修は丁寧です」と動画の情報をもとに回答される状態になりました。

採用LLMOで目指すのは、自社サイトだけを充実させることではありません。

公式サイトの一次情報、採用ブログや動画などのコンテンツ、第三者メディアや口コミなどを通じて、AIが信頼して引用できる情報環境を整えます。

大西は採用LLMOを「AIにも人にも選ばれるための先行投資」と位置づけます。

社内にある言語化されていない魅力やカルチャーを、定量データや具体的な制度に翻訳し、AIにも人にも信頼できる形で伝わる状態をつくることが重要です。

これからのLLMOに向き合う3つの指針

LLMOカンファレンスを通して見えてきたのは、LLMOが単に「AIに引用されるための施策」ではないということです。AIを通じて、どんな場面で自社を知ってもらい、比較され、選ばれたいのか。その状態から逆算して情報を設計することが重要です。

1.「どんな問いで選ばれたいか」から逆算する

  • まず、自社が選ばれたいプロンプトや比較の文脈を定める。AIにただ露出するのではなく、「誰の、どんな問いに対して推奨されたいのか」を明確にすることが出発点となる。

2.選ばれる理由を「証拠」に変え、適切な場所に置く

  • 自社の強みを抽象的に語るだけでなく、数値、実績、一次情報など、AIが根拠として扱える情報に変換する。
  • 自社サイトだけでなく、メディア、PR、動画、口コミなど、AIが参照する情報源まで含めて整備する。

3.AI上での見え方を測り、次の発信につなげる

  • 推奨されたかだけでなく、どんな理由で選ばれ、何が引用され、どんな文脈で語られたのかを確認する。その結果から不足している情報を特定し、次のコンテンツやPRへ反映し、改善サイクルを回し続ける。

AI検索時代に求められるのは、小手先のテクニックで露出を増やすことではありません。ユーザーの問いを理解し、自社が選ばれる理由を明確な証拠として社会に流通させ、その結果を継続的に検証していくことです。

LANYはLLMOを、SEOだけに閉じた施策ではなく、コンテンツやPRなども含めて「AIと人の意思決定にどう関わるか」を設計する取り組みとして捉えています。

AIにも人にも、選ばれる理由が正しく伝わる状態をつくる。そのためのマーケティングのあり方は、すでに変わり始めています。

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