「AI と人に選ばれる」ブランドは何をしているのか?──オプトと LANY が辿り着いた"接合点"

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目次

まとめ

ChatGPT に「おすすめの転職エージェントは?」と聞く。Gemini に「仕事にもプライベートにも使える服のブランドは?」と相談する。そんな行動が、いま急速に当たり前になりつつあります。

この変化が意味するのは、マーケティングの焦点が「検索結果で上位に出ること」から「AI の回答の中で推奨されること」へと移り始めた、ということです。

本記事は、FOUND CONFERENCE 2026 にて株式会社LANY 代表取締役 CEO 竹内渓太と、株式会社オプト 執行役員 VP 中村駿介氏が登壇したセッション「『AI と人に選ばれる』ブランドは何をしている?」の内容を再構成したものです。

前半(LANY・竹内パート)では「AI に選ばれる」ための LLMO の実務を、後半(オプト・中村氏パート)では「人に選ばれる」ための戦略 PR の実践を扱い、最後に両者が辿り着いた"接合点"をお伝えします。

「AIと人に選ばれる」ブランドは、何をしているのか?

PART 1|AI に、選ばれる

消費者行動は「AI に相談する時代」へ

消費者行動モデルの変遷を振り返ると、マスメディアの時代は「AIDMA(注目→興味→欲求→記憶 →購買)」、検索エンジンの時代は「AISAS(注目→興味→検索→購買→共有)」と、時代のメディア環境に合わせてモデルが更新されてきました。

そしていま提唱されているのが「AICAS(相談→興味→確認→購買→共有)」です(出典:日経クロストレンド)。購買行動の起点が、AI への相談(Ask)に変わった。つまり、興味・関心の最初の相談相手が、人でも検索エンジンでもなく、AI になったということです。

選ばれるのは 2 段階。「候補に入る」と「選ばれる」

AI 相談時代に自社が選ばれるには、2 つの関門があります。

1つ目は、ユーザーが AI に相談した時点で「おすすめ候補」に入っているか(MOFU:検討段階)。まず候補に残らないと、何も始まりません。

2つ目は、その候補の中から最後に「名指しで」選ばれ切るか(BOFU:購入段階)。

この 2 段を「人」に対しても「AI」に対してもつくる──これが AI 時代のマーケティングの基本構造です。

選ばれるのは2段階。「候補に入る」と「選ばれる」

AI が回答をつくるまでの流れを理解する

では、どうしたら AI に選ばれるのか。答えはシンプルで、AI の回答生成プロセスを理解し、介在できる箇所に介在することです。

AI は以下の流れで回答(推奨)を生成しています。

  1. Prompt:ユーザーが問いを投げる
  2. Fan-out:AI が問いを複数の検索クエリに分解する
  3. Retrieval:分解した問いで Web 上の情報を集める(参照面)
  4. Model synthesis:集めた情報を統合し、取捨選択する
  5. AI answer:推奨されるブランドが回答として返る

AIが回答を作るまでの流れ

参照には 2 系統あり、①モデルが事前学習で覚えた知識と、②RAG(その場で Google などの Web を外部参照する仕組み)があります。特に重要なのが RAG です。

このプロセスの中で AI は、収集した情報から「良い◯◯とは何か=KBF(購買決定要因)」を学び、各社の「証拠=RTB」を照合して推奨ブランドを選んでいます。

そして重要なのは、Fan-out とModel synthesis は AI 内部の工程であり、我々は直接触れられないということ。手を入れられるのは「どんな問いに(Prompt)」と「どこを見て何を選ぶか(Retrieval)」の 2 か所です。

AIが回答を作るまでの流れ

AI に PR する──打ち手は 3 ステップ

介在ポイントを実務に落とすと、次の 3 ステップになります。

  • CEP:どんな問い(プロンプト)が打たれるのかを設計する
  • KBF:その問いで AI が何を基準に推奨を決めるかを特定する
  • RTB:AI がどこを探すかを見極め、どこに証拠を配置すれば選ばれるかを設計する

AIにPRする

王道は「自社の強みを AI に学ばせる」ことです。自社の強み(RTB=証拠)を揃え、AI の参照面に置き(Retrieval で拾わせる)、AI が学んで推奨する。実際の LLMO プロジェクトの 8〜9 割はこの王道パターンです。

AIにPRする

配置先は公式サイトだけではありません。公式サイトには自社の強み・事例・FAQ を、SNS には口コミ・評判を、比較サイトには専門家コメントやレビューを、PR 記事には受賞・公的認証・大手との提携・共同研究エビデンスを──というように、AI が参照する情報源すべてに対して根拠となる情報(RTB)を適切に配置するのがポイントです。

AIにPRする

実際に成果は出ている

この王道アプローチで、業種を超えて成果が再現されています。

  • 特化型転職エージェント:AI 経由の候補者応募数(CV)が 2 ヶ月で約 4 倍に。しかも既存の応募経路を損なわずに純増
  • BtoB SaaS:機能を課題文脈に紐づけ、圏外から推奨 1 位を獲得
  • SaaS 連携ツール:組み合わせ訴求+FAQ 整備で上位 3 位を網羅
  • BCP サービス:対象規模を AI に明示し、大企業・自治体プロンプトで推奨獲得
  • 社内 DB 構築:具体的な料金情報の整備で費用系プロンプトの推奨 1 位に
  • 美容クリニック:RAG 参照先に客観・定量情報を置き、信頼性訴求で推奨獲得

圏外からの推奨獲得、順位逆転、AI 起点での見込み顧客の創出まで、領域が変わっても同じ「型」で成果が出ています。

ただし、王道には限界がある

ここで難しい問題があります。AI の選定基準(KBF)が、自社の強みとズレている場合です。基準に合わせるだけでは、自社の強みが評価されず、選ばれない。では、どうするか。

PART 2|人に、選ばれる

昔から、戦略 PR が向き合ってきた領域

「強みと基準のズレ」は、実は戦略 PR が昔から向き合ってきたテーマです。

有名な例がアリエールの戦略 PR です。かつて「いい洗剤=洗浄力」という基準の中で、アリエールの強みは「除菌」でした。そのままでは強みが評価されず選ばれない。しかし「部屋干し」が増えてニオイが気になり出すという世の中の流れを捉え、「部屋干し臭には除菌」という PR を展開したことで、「いい洗剤の基準」そのものが動いたのです。

AIにPRする

これは、人間の脳内にある"いい洗剤の基準"を書き換えた仕事──つまり属性順位の転換です。

AI 時代は、この基準づくりの場所が広がりました。昔は人間の脳内だけ。いまは AI の参照面(デジタル空間)という「もう一つの脳」でも、同じ選別が起きています。人間の脳へは従来の戦略 PR で「いい◯◯」の常識を作り、AI の脳へはデジタルな PR で参照面に基準と証拠を置く。どちらも「基準そのものを動かす」PR の仕事です。


LLMOの成果は、戦略PRで決まる。 - 「AIの評価基準をつくる」アプローチとは

ChatGPTやGeminiといったAIツールの普及により、ユーザーの行動は「検索して探す」から「AIから直接回答を得る」形へと移行しました。これに伴い、AIに自社に関する情報を正しく認識させ、推奨される状態を作るLLMO(Large La...

lany.co.jp

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属性順位の転換なんて、そう簡単にできるのか?

PR の定義は「さまざまなステークホルダーとの新たな合意形成を生み出す技術」、戦略 PR の定義は「プロモーションを実施するのに最適な情報環境をつくる」こと(嶋浩一郎氏/博報堂ケトル)。

象徴的な成功例が、au の子ども向けケータイ「mamorino」です。入学シーズン前に通常の広告を配信するだけでは効果は限定的。そこで、物騒なニュースが流行しているという社会的な起点を捉え、「新入学の親が一番心配なのは?」という共通課題に着目した共同調査を実施し、「通学時の安全」が最上位であるという事実を明らかにしました。プレスリリース→入学準備号(40 万部発行)での記事展開→全国紙・メディアでの露出→CM 文脈への接続、という流れで「選ばれる必然」を形成しました。

戦略PRの成功例:mamorino

戦略 PR によって「対処欲求の喚起」を行なっているのです。

AI 時代に PR 思考の価値が「爆上がり」している 2 つの理由

理由①:対処欲求の喚起

AI時代におけるPR至高の価値①

アレンバーグ・バス研究所の『95:5 の法則』によれば、欲求を言語化できている層は全体のわずか5%。つまり AI 検索(会話型検索)で捉えられるのは一部の消費者に過ぎません。AI 検索への適応はもちろん重要ですが、残りの 95%から見込み顧客を創出することは欠かせない。そのために、対処欲求の喚起を得意とする戦略 PR をどう生かすかが肝要になります。

理由②:AI に選ばれる情報環境づくり

AI時代におけるPR思考の価値②

AI は E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を満たす情報を優先的に引用します。オウンドコンテンツ、SNS/レビュー、第三者記事──戦略 PR を駆使した権威性・信頼性を伴う情報露出は、AI 検索結果を自社に優位な状態に導く上で重要な役割を果たします。

つまり PR 思考には、人間・AI の双方に選ばれる構造的理由があるのです。

実践:オンワード樫山『23 区』の挑戦

Case Study

オプトが実践しているのが、PR 思考とデジタルを融合させた「DR メソッド」です。核となるのは 2 つの言葉の開発です。

PR思考とデジタルの融合

  • 需要を喚起するペインワード
  • その受け皿を想起させるソリューションワード(≒コンセプト)

この 2 語をコミュニケーションの軸に据えることで、一般的なプロモーションのスコープ(解決策の知覚→行動)より手前にある「需要の喚起」から設計できます。

オンワード樫山『23 区』の事例では、各アイテムの魅力からではなく、生活のペインから文脈を創造しました。着眼したのは「冬服悩み」と「オフィスカジュアル悩み」。衣服による防寒の悩み第 1 位は「着ぶくれ」。そして、「人と被りたくない」「高すぎないきれいめ服で通勤したい」という欲求。──この 2 つは両立できない、という発見です。

副服悩みとオフィスカジュアル悩み

冬服悩みとオフィスカジュアル悩み

冬服悩みとオフィスカジュアル悩み

そこから生まれたのが、ペインワード『着膨れ通勤』×ソリューションワード『美シルエットの遊勤コーデ』。着ぶくれが憂鬱な冬通勤が楽しみになり、仕事後のプライベートも両立できる、遊び心のある通勤コーデを 23 区が提供する──通勤コーデの常識をひっくり返すコアアイデアです。

着ぶくれ通勤×美シルエットの遊勤コーデ

美シルエットの遊勤コーデ

施策はOOH・イベント PR(話題化のきっかけ作り)、IF コーデ提案(遊勤コーデの実態作り)、WEB 広告(今買う理由作り)、タイアップ/特集 LP(信頼感・憧れの醸成)まで統合的に展開しました。

オンワード23区:遊勤コーデキャンペーン

結果:人は動いた。売上も動いた

結果として、対象商品(ダウン/ニット)の売上・新規会員数はともに前年を大きく上回る成長を達成し、新たな顧客層との接点拡大に成功しました。

特筆すべきは検索行動の変化です。世の中に存在しなかった「遊勤 コーデ」という検索キーワードが生まれ、既存の一般ワードとほぼ同数の流入数に達し、CTR は一般ワードと比較して非常に高い数値を記録。指名ワード比では流入が大きく拡大する結果となりました。まさに"属性順位の転換"を示す結果です。

定量結果:検索広告パフォーマンス

※数値は非公開

PR による露出レバレッジも大きく、情報ニュース番組での TV 露出、ネットニュースのトップ欄・WEBメディアへの掲載など合わせて非常に多くの露出を実現。広告換算額は投資額の数倍に及びました。

従来のデジタルマーケティングが「短期成果・フロー型」だとすれば、PR 思考×デジタルマーケティングは「短期+長期成果・ストック型」の投資になる──これが投資目線で重要な発見です。

接合点|つくって、残す。

では、23 区は AI にも選ばれているのか?

ここからが本セッションの核心です。この施策(2024 年 11 月〜2025 年 1 月)を経て、23 区は AI にも選ばれているのか。実際に AI に聞いてみました。

Prompt:「仕事にもプライベートにも使える、おすすめの女性アパレルブランドは?」

AI の回答では、23 区は十分に推奨されていない。

人は動いた。売上も動いた。しかし、AI の推奨には白地が残っている。当時の方法論だけでは、AI に選ばれるには不十分だったのです。

何が足りなかったのか──3 つの介入ポイントで診断する

前半で示した AI 回答生成プロセスへの 3 つの介入ポイントで、この施策を診断してみます。

何が足りなかったのか

介入ポイント人間には届いた(✓)AI の参照面では(✕)
01 入口(CEP)

「仕事とプライベートを両立できない」ペインを言語化し、需要を喚起した

属性順位の転換に成功し、消費者が AI に投じる問いとその解が直線的につながる状態は作れていた(PR・広告のメッセージ構造は◎)
02 基準(KBF)『遊勤コーデ』という言葉で"いい通勤服"の常識を転換した同上
03 参照面(RTB)TV・新聞雑誌・Web・SNS に至るまで話題と信頼を醸成した各参照面における「遊勤」の説明内容が CEP と一致させ切れておらず、AI の学習が有利に働く環境になっていない(デジタル上に残す情報資産の設計が✕)

一言でまとめると──話題を「つくる」設計はあった。しかし、AI の参照面に「残す」設計がなかった。

まとめ:戦略 PR と LLMO の実行の連動が、次のマーケティングの鍵

本セッションの結論はこうです。

まとめ

  • PR 思考(つくる)ペインワード×ソリューションワードで、問い(CEP)と基準(KBF)を世に生む
  • LLMO(残す)AI の回答生成プロセスを理解し、証拠(RTB)を Retrieval(参照面)に固定するつくって、残す。

この二つが連動して初めて、ブランドは「AI と人に選ばれる」。

AI の回答生成に介入できるポイントは 3 つあります。①入口(CEP)=ユーザーが AI に投げる問いを広げる戦略 PR、②選定基準(KBF)=AI が使う物差しを書き換えるデジタル PR、③参照面(RTB)=今の基準に合わせて証拠を配置する LLMO 実務。対策の本質は「SEO(順位対策)」ではなく、言及そのものを作り変える「デジタル PR・戦略 PR」です。

AI回答生成プロセスに介入できる3つのポイント

戦略 PR と LLMO の実行の連動──これが今後のマーケティング活動の一つの鍵になると、私たちは考えています。

AI と人に選ばれたい方へ

オプト×LANY では、戦略 PR と LLMO を連動させたマーケティング支援を提供しています。「自社は AIにどう語られているのか知りたい」「強みが AI の選定基準とズレている気がする」「PR で作った話題を AI の参照面に残したい」──そんな課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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登壇者

  • 竹内 渓太(株式会社 LANY 代表取締役 CEO)
  • 中村 駿介(株式会社オプト 執行役員:VP)
プロフィール画像
担当メンバー 竹内 渓太

株式会社リクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やBtoBマーケティングなど多種多様な業務を経験。その後、株式会社LANYを創業し、Webメディア・サービスサイト・データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでいる。

X・YouTubeチャンネルで「SEOおたく」としても情報発信中。著書『強いSEO』『強いBtoBマーケティング』『強いLLMO』(エムディエヌコーポレーション)出版。

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